備蓄全てはきだす

沖永良部島で行われたテックス板設置による初動防除

テックス板

 

今回の誘殺に伴う初動防除で

 

植防、追加発注し対応

 

 果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの誘殺は、沖永良部島に続き徳之島でも確認されたが、初動防除で使用されている誘殺用のテックス板は農林水産省植物防疫所で備蓄されていたものが充てられた。誘殺地点周辺への設置により備蓄枚数全てがはきだされたことから植防では追加発注の対応をとっており、迅速な防除に向けて備蓄で必要とする枚数の議論が求められそう。

 ミカンコミバエの根絶方法は雄成虫の誘殺が採用されている。誘引物質として植物の丁子=ちょうじ=(フトモモ科の常緑高木)由来のメチルオイゲノールを使用。これに殺虫剤を混ぜた誘殺テックス板(木材繊維板)が投入されている。テックス板の有効期間は50~60日間(2カ月)。

 「誘殺効果が非常にある」として予防防除が行われている沖縄県でも活用されているテックス板。今回の誘殺確認に伴う初動防除では、知名町で3千枚(徳時と知名の半径1㌔㍍以内の誘殺地点周辺に2千枚、瀬利覚同に1千枚)、和泊町で1千枚(半径1㌔㍍以内の誘殺地点周辺)、天城町で1千枚(同)設置された。門司植物防疫所によると全て備蓄していたもの。名瀬支所に2千枚、鹿児島支所に同、門司に1千枚あった。

 現在のところ奄美群島では沖永良部・徳之島の2島での誘殺確認だが、台風や季節風など風に起因する周辺発生国(中国、台湾、フィリピン)からの飛来による「飛び込み」で、他島他地域でも誘殺が確認される可能性が十分にある。トラップや寄主植物調査、誘殺確認の場合は定着を防止するため初動防除が欠かせない。この初動防除に備えて、門司植防ではゼロとなったテックス板を再び備蓄するため追加発注している。新たに名瀬・鹿児島支所に2千枚ずつそれぞれ備蓄するという。

 初動防除のためのテックス板備蓄についてJAあまみ大島事業本部奄美市果樹部会長の平井孝宜さんは「初動対応マニュアル(奄美大島での緊急防除を受けて昨年8月策定)では同時多発的な誘殺を想定し、どれくらいの数のテックス板を備蓄するかという議論まで踏み込んでいないのではないか。誘殺は奄美群島全域で確認される可能性があるだけに、顕在化した場合の全域を対象にした防除を想定し、備蓄する数と必要な予算の財源をどうするか検討すべきでは」と指摘する。

 テックス板の備蓄にあたっては農水省の予算が活用されている。テックス板の価格は1枚265円もする。1千枚設置なら26万5千円。予防防除のためのテックス板予算化では、沖縄は沖振法の交付金を活用している。防除のための裏付けとなる財源の確保。奄美や沖縄の南西諸島は「ミカンコミバエ侵入リスクが常にある」とされる中、常に警戒し防除を徹底するためにも奄振法活用による予算の恒久化を求める声もある。
(徳島一蔵)