世界自然遺産へ「おもてなしの心」学ぶ

2020奄美へのフライトをシミュレーションし、アナウンスをする江上いずみさん

懇親会
懇親会で島唄を披露する里歩寿さんと、歌声に聴き入る江上いずみさん

東京奄美会文化講演会
「空の接客のプロ」元JAL客室乗務員が講師

 【東京】東京奄美会(森眞一会長)は16日、千代田区の主婦会館で2017年度文化講演会を行った。講師を筑波大学客員教授で、グローバルマナースプリングスの江上いずみ代表が担当。江上さんの体験に基づく感動的な「おもてなし学」に、参加した140人はみな満足していた。

 「グローバルマナーとおもてなしの心~奄美・琉球の世界自然遺産登録に向けて~」と題した同講演会の講師・江上いずみさんは、日本航空(JAL)の客室乗務員として1万8525時間を乗務した、いわば「空の接客のプロ」。定評ある機内アナウンスと応接は、後輩の模範で日本航空の機内アナウンスを指導するPAクリニック創設者でもある。

 「世界自然遺産登録を見越して外国人や多くの人が奄美を訪れることから、世界標準のマナーを学ぼう」(東京奄美会・竹内英健文化広報部長)との背景から、江上さんに白羽の矢が。東京奄美会・森会長のあいさつに続き、大きな拍手の中、江上さんが笑顔で登場。「日本の文化・おもてなしの心」では、「お金の概念のサービスと違い、おもてなしは見返りを求めない」などの第1章から、「言葉掛けとおもてなしの心」まで、五つの章をプロジェクターにより丁寧に説明した。

 江上さんが「おもてなしの心」を大切にする理由は、1985(昭和60)年8月12日の御巣鷹山の事故。当日、大阪を出発した飛行機で擦れ違うはずだったこと、事故機に乗っていた後輩の遺品に立ち会ったエピソードが語られ、機内の人たちが家族へあてた数多くの遺書が映し出された。家族を思う無償の愛をあらためて知らされた参加者たち。誰もが涙で頬をぬらしていた。

 一方、あごで返事をするなどの悪い例を再現。その名演技には大きな笑いが起きていた。最後は、「2020奄美へのフライト」をシミュレーションした機内アナウンスを披露した。

 江上さんは、「奄美を訪れたこともなく、奄美の方を前に講演も初めてで新鮮でした。笑う場面ではきちんと笑ってくださり、本当に温かい印象を受けました」と振り返った。唄者・里歩寿=ありす=さんなどが余興を披露した、第二部の懇親会にも出席。記念写真に納まり、笑顔で応対していた。

 ある参加者は「感動の一言。また、乗務員に気軽に声掛けしていいと聞いて安心しました」と話していた。江上さんは、13年に東京五輪の開催決定を機に独立、年回講演数は250回に及ぶ。

 江上さんは国内外を飛び回り、「おもてなし学」の構築に取り組んでいる。主な著書に『JAL接客の達人が教える 幸せマナーとおもてなしの基本』(海竜社)、『おもてなし達人が教える〝心づかい〟の極意』(ディスカバー21 )がある。