無許可設置 相次いで発見

見つかりにくいよう設置された昆虫トラップ(提供写真)

違法行為に該当来島者にも周知徹底を
昆虫トラップ 小型化など巧妙化も

 3月に誕生した奄美群島国立公園の特別地域内で6月下旬、規制されている昆虫トラップの無許可設置が相次いで発見された。観光シーズンを迎えて、関係機関は増加する島外からの観光客に対する周知や、特別地域内のパトロールなど継続する。

 国立公園の特別地域内では、自然公園法で工作物の設置を規制。昆虫トラップは学術研究目的で、許可を得ないと設置できない。

 同法によると国立公園の特別地域内での開発等の行為には、環境大臣の許可が必要。昆虫トラップは工作物設置で、大型の工作物でないので法定受託事務を実施できる鹿児島県知事が許可の判断を行うことになっている。

 昆虫トラップの無許可設置は、先月21~30日にかけて奄美市内で県と市などが確認。27日には、複数の昆虫トラップを回収しようとしていた県外からの男女2人が奄美警察署に通報されている。

 特別地域での昆虫トラップの無許可設置は、違法行為に該当。違反したら懲役6カ月または50万円以下の罰金が科せられる。国立公園の区域外でも、奄美大島5市町村が制定する条例で指定する希少種や固有種の捕獲採取などは禁止されている。

 環境省や県は、国立公園の概要や保護規制に関する資料を作成して配布。また夏休みに入ることから市環境対策課は啓発チラシ「島内での昆虫を含む動植物の採取について」を作成して、終業式で市内の全小中学生約3800人とその保護者に渡して昆虫採取などの注意点について周知した。

 同課の島袋修課長は、国立公園特別地域内で昆虫トラップの無許可設置が相次いだ事態に「(違法行為であることが)島外の人に、あまり浸透していないのでは」と指摘。「今後、観光客などが利用するレンタカーやホテルなど民間業者との連携で周知徹底を図りたい。パトロールなどでトラップに、引き続き注意を払っていきたい」と語った。

 奄美大島自然保護協議会(奄美大島5市町村で構成)パトロール員の山下弘さんは、体制の強化を望みつつ住民の意識向上を課題とした。また大量捕獲目的の例を挙げ、「見つかりにくいように小型化し高い場所に設置するなど、昆虫トラップの巧妙化を感じる」と述べた。パトロール体制は2016年に、それまでの奄美市内を巡回する2人から奄美大島全体を回る4人に増員されている。

 今月はまだ国立公園の特別地域内で、昆虫トラップは確認されていないが、環境省や県は確認地点などで啓発の看板を増設。奄美警察署との連携も進められていて、関係者からは抑止効果を期待する声も出ている。
(松村智行)