九州地方で相次ぐ「離岸流」海難

奄美市笠利町土浜海岸で発生した離岸流の様子(矢印で示された方向に水が流れている)=奄美海上保安部提供写真=

奄美大島では5年間で11件の事故
遊泳前に危険箇所確認を

 11日、福岡県古賀市の海岸で遊泳中の男児2人とその父親がおぼれ、救助に向かった男性を含め4人が死亡する事故があった。熊本県上天草市の外平海岸では12日、男性が流され行方不明になる事故が発生。九州地方で相次いで起こった海難事故。どちらも「離岸流」によるものだと見られている。

 奄美海上保安部交通課安全対策係の政木亮介さんによると離岸流は海岸の水の流れのうち、海岸から沖合に向けて強く流れるもの。幅は10~30㍍と狭いが、秒速2㍍、競泳のオリンピック選手に匹敵する速さになることもある。

 サンゴ礁に囲まれた奄美群島の島々では、離岸流の一種「リーフカレント」に注意が必要。リーフや岩場の切れ目に水流が入りこみ、流れが強くなる。2012年から16年までの5年間に奄美大島で発生したマリンレジャー中の海難事故は53件。このうち離岸流によるものは11件。14年8月には奄美市笠利町土浜海岸で遊泳中の観光客2人が離岸流に流され、死亡する事故があった。

 政木さんは「笠利町は地形的に離岸流が発生しやすい場所。ライフセーバーや監視員のいる場所で遊泳するべき」と注意を促した。政木さんによると、笠利町では、あやまる岬周辺の海岸、土浜海岸、土盛海岸で離岸流が発生しやすい。このほかの地区では龍郷町赤尾木の東海岸、手広海岸、瀬戸内町の嘉徳海岸を挙げた。また砂浜だけではなく、防波堤や突堤の付近などでも発生することがあるという。

 離岸流による海難事故を防止するためには航空写真の確認や、高台から観察するなどの方法で、自身が遊泳する場所のリーフの切れ目や危険箇所を事前に把握することが大切。離岸流に巻き込まれた場合には無理に岸に向かって泳ごうとはせず、水面に浮いて救助を待つか、岸と平行に泳ぎ離岸流から脱出してから、海岸に向かう流れに乗って戻るべきだという。

 同保安部では、離岸流の周知、啓発を目的に、子どもたちに向けた海上安全教室を開いている。また宿泊施設へのリーフレット設置や、遊泳客への声かけ活動を実施している。

 政木さんは「安全に海を楽しむには、一人で泳がない、危険な場所には近づかない、飲酒後は泳がないといったことを守り、浮き輪やライフジャケットなどをつけて泳ぐべき」と話した。
 (西田元気)