古文書の写真撮影と目録作成に取り組む坂元さん(左)と大山さん
オオトラツグミのはく製を展示する宇都宮さん(左)と吉森さん(※ジオラマコーナーは立ち入り禁止です。展示のために入っています)
奄美市名瀬の市立奄美博物館で先月21日から、学芸員資格取得を目指す大学生4人が博物館実習を行っている。大学生たちは自然班と歴史文化班に分かれて、教育普及業務や資料整理、展示資料の追加など行い資格取得に向けて技術や知識習得に努めている。
奄美博物館は、奄美群島の拠点博物館として毎年博物館実習を受け入れ博物館の学芸員養成教育に協力。2006年度から17年度まで35人の博物館実習生とインターンシップ7人の42人が、同館で実習している。
市は13年度から実習生などの旅費・宿泊費の一部を助成する「奄美市インターンシップ事業」を開始。同館では、この事業で島外からの実習などへの参加者が増加してきているとした。1日は実習の最終日で、学生たちは11日間におよぶ実習の総決算に取り組んだ。
島外から参加する南九州大(宮崎県都城市)4年生は、環境園芸学部環境園芸学科の宇都宮茜さん(大分県出身)と吉森和音さん(長野県同)。「里山におけるクマタカ」を研究テーマとする吉森さんと「在来野菜糸巻き大根の品種改良」を卒論にまとめる宇都宮さんは、自然班に配置されて同館の平城達哉さんの指導の下、リュウキュウアユ観察会の準備や鳥類のはく製資料の追加展示の企画などを担当した。
大島高校OGの沖縄県立芸術大4年の坂元蘭さん(美術工芸学科絵画専攻)と愛媛大学4年の大山千晴さん(法文学部人文学科)は、同館の山下和さんが指導担当となり歴史文化班で古文書資料のクリーニングや写真撮影、目録作成を実習。2人はめったに学生では経験できない古文書のドライクリーニング(泥落とし、虫死骸など除去)を行い、約100点の古文書を写真撮影し目録化した。
自然班の2人は、観察会の下見や生き物の知識を深めるために奄美大島各地を巡り専門家などと交流して、ナイトツアーなどにも積極的に参加。リニューアル展示に企画書を作成して、オオトラツグミやアカショウビンなどの鳥類のはく製6点を同館3階のジオラマコーナーに新たに設置した。
4人とも充実した表情だったが、実習終了を惜しむ声も。吉森さんは「ジオラマの追加展示を任されて、幸せな経験ができた」と話し、宇都宮さんは「ナイトツアーでクロウサギやアマミイシカワガエルなど、天然記念物をたくさん見て写真が撮影できた」と喜んだ。
歴史文化班の大山さんは「今回の経験で将来、奄美の作品をアートスペースに展示してサロン的な場をつくりたい」。坂元さんは「教育や芸術現場での就職を考えている。アジア各国を回って自己の視野を広げたい」と語った。
学生を指導した平城さん山下さん共に博物館実習の学生を担当したのは初めてという。平城さんたちは学生の熱心な取り組みに感心して、「今回の経験を自分の将来に生かしてもらいたい。今後何らかの形で奄美に貢献してもらえれば」とエールを送った。