徳之島町尾母「秋ムチ」

「イッサンボー」と青壮年らの歌・踊りで集落中が活気に包まれた「秋ムチ」=23日夜、徳之島町尾母

尾母、秋ムチ、ヨコ小
新規転入者宅に上がり込んで招福と歓迎の踊りも

「イッサンボー」はずむ

 

歌・踊りで集落に活気

 

 【徳之島】徳之島町尾母集落(池弘区長、107世帯・214人)で23日夜、伝統の「秋ムチ」があった。今年も集落の青年団(東裕也団長)など若い力がけん引役を務めた。「イッサンボー」と呼ばれる〝招福神〟のかかしを弾ませながら、情熱的な歌と踊りを奉納。伝統行事で世代間交流も図り、集落中が活気に包まれた。

 秋ムチ(アキムチとも)は「むちたぼれ」などと同列の水稲の豊作祈願祭の一つ。果報を呼ぶ〝招福神〟になぞらえた「イッサンボー」は伊仙町犬田布・木之香地区とも共通。尾母集落でも稲作が消滅して久しいが、「伝統行事で住民の和と活性化を」と青年団が15年前に復活させた。

 午後7時すぎ尾母小中学校横の「溝川(じょうご)神社」を、「イッサンボー」と松明(たいまつ)を掲げた踊り連一行が道行き唄「どんどん節」を歌いながら出発。尾母小中の児童生徒ら交えた集落住民と、集落外からの見物客含め約200人に膨れ上がった。

 一行は教職員などこの1年間の転入者宅などを訪問して招福と祝福の踊りを披露。集落内の主だった交差路でもにぎやかに輪を広げた。集落目抜き通りを一巡して再び同神社で歌・踊りを奉納。訪問先からテルかごに贈った、お餅や菓子などのご祝儀を奉納後、会場に振る舞う「餅投げ」でわかせた。

 同町地域おこし協力隊員で、地域創生型研究にも取り組む中村芳雅さん(35)=東京大大学院博士課程在籍、山口県出身=は、「大人から子どもまでが一緒に動き、とにかくすごいが第一印象。環境による世代間の考えの違い、世代間倫理の違いをいかに乗り越えるか。伝統行事を通じその実例を見ることができた」と感動。

 4月に青年団長のバトンを受けた東団長(27)は「先輩たちからわれわれ若い世代も奮起して継承。(同町)井之川の浜下り行事のように、尾母といえば『秋ムチ』といわれる代表的な伝統行事。校区外の人たちも楽しく参加できる行事にしていきます」と力強く話した。