着工21年、国営徳之島用水事業

国営徳之島用水事業で建設された「徳之島ダム」全景(九州農政局より)

完工碑除幕式

完工式、式典
完工碑除幕式(徳之島ダム)と完工式(天城町防災センター)=11日、同町

「雨待ち農業から脱却を」

 

完工碑除幕と完工式典

 

 【徳之島】1997年度に事業着手していた国営徳之島用水農業水利事業(国営かんがい排水事業)の完工碑除幕式(徳之島地域農業総合対策推進協議会主催)と、同完工式(九州農政局主催)が11日、徳之島ダムと天城町防災センターであった。国・県・3町など関係機関や受益者組織など関係団体代表らが出席。総事業費約590億円を投じた農業水利基盤の完工による「雨待ち農業から脱却」、亜熱帯性気候を生かした計画的・戦略的農業の展開に期待を寄せ合った。

 国営徳之島用水農業水利事業は夏場の干ばつや台風・塩害などの気象要因で畑作農業が著しく阻害されている現状を改善するのが目的。農林水産省は90(平成2)年度に地区調査を開始して全体実施設計などを経て97年度に事業着手。3町の受益面積3451㌶を対象に、▽天城町秋利神川への「徳之島ダム」(有効貯水量730万㌧)の築造▽用水路全長128㌔(送水路7・1㌔、幹・支線水路62・1㌔、配水路58・8㌔)▽揚水機場9(幹線機場3カ所、末端加圧機場6カ所)▽調整池2(北部、南部)▽その他、ファームポンド12カ所、水管理施設1式、小水力発電所1式などを整備。着工以来21年。事業計画の変更(縮小)もあったが、今年度の小水力発電機器の設置・運転開始をもって無事、完工にこぎ着けた。

 完工碑は、島内産の琉球石灰岩(琉球トラバーチン)に「徳之島ダム」と、天城町立西阿木名中3年の西元ひまわりさん(14)が願いを込めて揮ごうした「大地と水の恵みを次世代へ」を刻みダム敷地に2基設置した。関係機関・団体代表や西元さんら16人が除幕のロープを引いた。同町防災センターに会場を移し、関係者約150人が出席して完工式へ。

 九州農政局の石井俊道局長は式辞で「(徳之島は)奄美群島随一の面積を誇る畑作地帯で、農業が経済の基盤。温暖な気候を生かしたサトウキビを主作物に野菜、畜産など複合経営が行われているが、畑作の用水は降雨などに依存。夏場の干ばつや台風の被害を受けやすく、天候頼みの不安定な農業を強いられている」と指摘。3町内の計3451㌶を受益対象にした国営事業で整備された施設を有効活用し「本地区農業がさらに発展して豊かな地域社会の形成を」と期待。

 齋藤健農水大臣あいさつ(代読)や事業経過報告などに続き、三反園訓県知事(小林洋子副知事代読)は「畑地かんがいを効果的に確実に進めるため付帯施設(スプリンクラーなど末端かん水設備)を着実に進めたい」とも強調。徳之島地域農業総合対策推進協議会会長の大久幸助天城町長は「徳之島農業の新時代の到来だ。典型的な自然任せの農業を強いられてきたが、若い農業経営者が将来に夢の持てる農業に」と期待。

 受益者組織・徳之島用水土地改良区の新納啓武理事長が謝辞を述べ、「農家の高齢化が進む中で認定農業者や担い手農家の育成、農地の集積や流動化による規模拡大、経営能力の向上、新規作物の選定・導入などを積極的に推進。水利用へダム施設も適切に管理して水利用組合を充実・強化。足腰の強い農業を展開して島の飛躍に」などと決意を示した。

 今後は同国営事業付帯の県営畑かん設備(末端の給水栓やスプリンクラーなど)施工力点が移る。県当局によると最終目標は24(平成36)年度ごろ。ちなみに16年度末の実施済み(散水可能)面積は全受益面積のうち約344・5㌶(進捗率約1割)。施工への同意取得の推進が大きな課題となる。