衆院選鹿児島2区の開票作業。自民前職の金子氏の圧勝だった(奄美市で)
2区、保守分裂でも大差で金子氏3選
県内4議席、自民の独占ならず
22日投開票の第48回衆院選。13人が立候補した鹿児島県の4小選挙区では、1区は立憲民主党の元職が当選、2~4区はいずれも自民党前職が当選したものの、「保守王国」鹿児島で自民の4議席独占はならなかった。保守分裂、野党再編の影響が注目された2区は、分裂選挙につながった政治姿勢批判に自民前職は乗らず、「大人の対応」で政策論争を重視したのが組織のまとまりを招き、功を奏した。
「1票の格差」是正で定数が1減となり、7月に区割りが見直されて初の選挙となった今回の衆院選。1区での立憲民主元職の川内博史氏(55)と自民新人の保岡宏武氏(44)の争いは最後まで接戦となり、1868票差で川内氏が勝利した。川内氏は社民と共産の支援を受け、無党派層も取り込み政権批判の受け皿となった。公示2日前に引退を表明した元法相の興治氏の長男、宏武氏は出遅れを挽回できず、世襲批判も影響した。
前職同士が対決した3区。自民前職の小里泰弘氏(59)が、希望前職の野間健氏(59)の追い上げを振り切り、1万2261票差で5選を果たした。
4区は自民前職の森山裕氏(72)が12万8112票を獲得、圧倒的な強さで社民新人の野呂正和氏(66)を下し、6度目の当選を果たした。
2区は、鹿児島市南部(谷山・喜入地区)と南薩、奄美群島のこれまでの2区に、旧鹿児島3区だった南九州市知覧地区・川辺地区、枕崎市、南さつま市が新たに加わった。これにより有権者数は約34万9千人、前回より約7万人増えた。
開票結果は、3選を果たした自民前職の金子万寿夫氏(70)が前回選(9万1670票)を上回る9万7743票を獲得。次点の希望新人・斉藤佳代氏(38)4万3331票、無所属新人・林健二氏(40)3万3317票、共産新人・祝迫光治氏(74)1万6280票の新人3人に大差をつけ圧勝した。金子氏の得票は新人3人の合計(9万2928票)をも上回った。
同じ自民党で、瀬戸内町出身の林氏が自民党を離党し、無所属で立候補。1期だった県議(大島郡区選出)を辞職し、出馬表明した際には元自民党衆院議員の徳田毅氏(46)が同席、「全面支援」を明言したことで、保守分裂選挙、奄美票も分裂が予想され、前職への影響から激戦必至とみられていた。
分裂の流れを食い止めたのは金子氏の選挙対応。「奄美は一つに反する行動、さまざまな選挙を通じて政治的混乱・対立を招くようなことがあった」という批判に対し、金子氏は「大人の対応をしたい。奄美が政治的混乱をきたした、そういう印象を外に与えないようにしたい。奄美の人の思いに心を寄せて、奄美の人の決断に全てを委ねたい」として批判合戦を展開するのでなく、2区のそれぞれの地域課題(都市部・農村部・離島部)を取り上げ、政策を訴える政策論争に舵を切った。
金子氏のこうした姿勢は自民組織票のまとまりにもつながった。県農政連や地元医師会、建設業界など600近い団体の推薦を得、これに基づいた組織戦の徹底により手堅い、盤石な選挙を最後まで進めた。2区内の県議も自民の議席を守ろうとフル稼働した。新たなエリアのため「知られていない。知名度が低い」とされた南九州市、枕崎市、南さつま市の南薩地域には解散を受けていち早く拠点事務所を開設。南薩地域での運動も徹底したことで他の候補者を大きく引き離す要因となった。
金子氏は2区の全市町村で得票数がトップで圧勝し、3人の新人を寄せ付けなかった。当選後の報道各社のインタビューで金子氏は「かつての『保徳戦争』のような激しい保守の分裂を二度とつくってはならない。今回もそれをしっかり守った。対立的な選挙の構図にならないようにし、今回の選挙結果をしっかり受け止め、今後の政治活動に生かしていきたい」と語った。
これに対し林氏はこう語った。「当初から厳しい選挙と予想していた。選挙結果をそのまま受け止めたい。前職の政治姿勢をただしたが、間違った主張だとは思っていない」。今回の選挙で林氏が打ち出した公約の第一項目には「利権屋政治を一掃し、信頼される政治を取り戻す」を掲げている。国民から信頼される政治、これを反芻していくことが2区の政治の安定をもたらす。