新種として認定された「アマミヨコミゾドロムシ」の標本写真=上手雄貴さん提供=
水生昆虫愛好家の上手=かみて=雄貴さん(39)=岐阜県岐阜市=が今年3月に龍郷町の河川で発見した水生昆虫が、今月25日発行の日本甲虫学会の学会誌「Elytra,New Series」で発表され、和名「アマミヨコミゾドロムシ」(学名Leptelmis torikaii)と命名された。日本本土や台湾に生息する同属種とは異なる特徴が認められ、「遺存固有種」だと推定されている。
上手さんは学生時代から水生昆虫の研究をしており、現在は仕事の片手間、助手役を務める妻・奈美さんとともに国内の離島を飛び回り、昆虫採集を行っており、奄美大島には4年に1回程度訪れている。
新種はヨコミゾドロムシ属に属するが、日本本土や台湾に生息する同属の種ではなく、中国南部に生息する種と似た特徴を持つ。上手さんは同種をアマミノクロウサギやルリカケスと同様の遺存固有種と推定する。もともとは同種の祖先がユーラシア大陸に広く分布しており、奄美大島が孤立した後、他の生息域で近縁種の多くが絶滅。奄美大島でのみ生き残ったという。
新種の大きさは2・23~2・62㍉。水生昆虫だが泳ぐことはできず、河川中の岩などに生息する。日本本土に生息する同属のヨコミゾドロムシと比較した際、▽やや小型▽足が赤みを帯びている▽プラストロン(呼吸器)の場所の違い▽胸と翅=はね=にある毛が短い▽翅の形が違う―などの違いがあるが、一番顕著なものは交尾器の形状の差で、中国南部の種と近縁種だと確定する大きな要因となった。
上手さんは「発見現場で新種だと判明することは少ないが、今回はすぐに分かり、気絶しそうなほどうれしかった。遺存固有種の発見は生物地理学的にも貴重。さらに奄美大島の中でも限られた場所にしか生息していないため、希少な種として保全生態学上も重要」と語る。また、学名にはNPO法人奄美野鳥の会の鳥飼久裕会長の名前が入っている。学生時代から鳥飼会長に世話になった経験があるという上手さんは「少しでも恩返しになれば」と話した。