地域交流の促進策で導入された「四半的弓道」の練習場(写真は奄美小学校内)
住民同士の交流に役立てようと奄美市名瀬の「奄美地区地域支え合い体制づくり協議体」(三島照代表)は誰でも簡単に楽しめるミニ弓道「四半的弓道」を取り入れている。本格的な道具を使った「弓を射る」「的に当てる」という一連の動作に子どもから年配者までが熱中。三島代表は「競技を通じて地域活動の活性化につなげたい」と話し、取り組みの効果に期待を寄せている。
競技は的まで4間半(8・2㍍)の距離で4尺5寸(約1・6㍍)の弓と矢を使い、4寸5分(約13㌢)の的を射って当たりを競うもの。用いる長さが全て「4半」なので四半的=しはんまと=と呼ぶ。宮崎県日南飫肥地方の発祥で、450年以上前から伝わってきたとされる。
同市名瀬の奄美小学校の校区住民でつくる同協議体は、高齢者の健康づくりのため昨年から導入。団体活動費を助成する県の2017年度「高齢者ますます元気!ふれあい生きがい支え合い支援事業」に採択され、弓矢20セット、標的、畳を購入。昨年12月から、小学校多目的ホールでの練習を本格化させ、週1回程度行っている。
今月7日夕は、児童や一般を合わせ15人が練習に参加。2畳の上に8人が椅子や正座で座り、準備。「さあー、いこうー」の掛け声がかかるとゆっくりとした動作で矢を射た。使用する矢は通常の弓道で使うものよりも長く、約150㌢。高い的中率も競技の特長の一つだ。
参加者に対し指導員は姿勢、弓矢の持ち方などをわかりやすく示し、「矢尻をしっかり固定させて狙う」「背筋を伸ばし姿勢を正す」などとアドバイス。参加者は的中するたびに笑顔を見せながら、2時間ほど練習を行った。
同校5年の山田心夏さんは「教えられた通りにすると当たるのでおもしろい」と話した。
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高齢者医療・福祉を地域で支える「包括ケア」システムの構築に向け、奄美市はシステムを主体的に運営する地域協議体を立ち上げ。事務局機能を持つ「第1層」、地域で運営指導を行う「第2層」、団体など「地域」―で構成され、そのうち第2層の「地域支え合い体制づくり協議体」は市内8地区(奄美、中央、金久、上方、下方、古見方、笠利、住用)で発足している。
名瀬市街地内に位置する奄美地区は、市街地外の地区に比べ、「高齢者と地域のつながりがやや不足している」(同地区関係者)として、高齢者のふれあいや交流を促進させようと、様々なイベントや活動を展開。導入した競技は宮崎県ではシニアスポーツとして普及するほど人気があり、幅広い世代が参加しやすく、年配者の知識や経験を生かせる魅力に注目したという。
三島代表は「高齢者が活動できる場を設けることが大切」と取り組みの意義を強調。また助成事業を採択した県共生・協働推進課の担当者が同日、会場を訪れ、活動などを視察。「幅広い年代の交流活動に役立て、地域課題の解消につなげてもらいたい」と期待感を示した。
同市の65歳以上高齢者数は2017年12月31日現在、1万0314人で高齢化率は28・06%。高齢者の一人暮らし、高齢者のみ世帯が増加傾向にある。
市社会福祉協議会は高齢者世帯の見守り体制構築に触れ、「地域づくりの方向性を含め、地域で支え合うという住民の意識付けが必要」と指摘。市内協議体の事業活動と並行して、市民の意識醸成の必要性を呼びかけている。