秋名・幾里の環境文化体験

北高で続けられている聞き書きサークルの活動報告を行った佐藤さん

シンポジウム 集落散策や事例発表

 

 鹿児島大学環境学研究会は環境省那覇自然環境事務所、鹿児島県と共催で28日、龍郷町幾里の秋名コミュニティセンターで「秋名・幾里の環境文化を知る・見つけるシンポジウム」を開いた。一般など約60人が参加し、事例発表や集落散策などを通して秋名・幾里の環境文化を体験した。

 シンポ冒頭で、環境省奄美自然保護官事務所の千葉康人上席自然保護官が環境文化型国立公園についてスライド資料で解説。千葉さんは「日本で一番新しい国立公園が奄美群島。秋名・幾里も国立公園のエリア内。環境文化型が大きなキーワードで、シンポジウムを企画した」と話した。

 第1部は「環境文化」を知ると題して、鹿大の小栗有子准教授がコーディネーターとして進行。パネリストで屋久島環境財団の北原和博事務局長、NPO法人すみようヤムラランド和田美智子さん、大島北高校聞き書きサークル、奄美博物館の高梨修学芸員が事例発表した。

 北原さんは、屋久島里めぐり(環境文化村構想)を紹介。「里めぐり参加料1500円をもらい、利用実績も2012年度174人から16年度624人と伸びている」とした。

 和田さんは民泊を導入した経緯や民泊メニューのタナガとり、ガンとりなどを報告。「西仲間集落は、通過するだけでなかなか人が来ない課題があった。住用の郷土料理カニのふやふやを振る舞ったら、福島からの民泊利用者に大いに喜ばれた」と語った。

 北高生徒は聞き書きサークルの活動報告をスライド資料で説明。普通科2年の佐藤望蒼=のあ=さんは、「聞き書き調査活動は4年前に本校OBで元奄美博物館長の故中山清美先生の呼びかけで始まった。調査ではシマ(集落)の長老・名人から、豊かな島の恵みや生活の知恵などシマの伝統文化を学び交流する」。

 高梨学芸員は、奄美博物館の環境文化構想を紹介。「博物館は老朽化のためリニューアルが企画されていて、環境文化型国立公園を基軸としたリニューアルを構想している」と語った。

 第2部の足元の「環境文化」をさがすでは、鹿大の星野一昭特任教授が進行。秋名幾里からアラセツ行事保存会の窪田圭喜会長、秋名集落の隈元巳子区長、生活研究グループ「まーじんま」の山田眞砂子さん、秋幾農業創成塾メンバーの國山教子さんと、鹿大の桑原季雄教授がパネリストとして集落の活動紹介や外からの視点で考えた環境文化を発言した。

 第3部は休憩後に、参加者は希望するコースに分かれ集落散策して環境文化さがしを実施。海との関りをめぐる金久コースと山や川との関りを調べるアガレコースに分かれ、秋名幾里集落の環境文化を体験した。

 アガレコースは桑原教授が担当し、窪田会長が環境文化など説明。コミュニティセンターから里の琉球石垣や、ショチョガマの祭場と神道などを1時間ほど散策し会場に戻りまとめを行った。

 第1部でパネリストして参加した北高の佐藤さんは、「聞き書き調査でいろんな地域の島口に触れ、違いに驚いた。自分でも島口を覚えて、島を出た時に奄美の方言を説明できるようになりたい」と述べた。