年輪気象学に関する講演会

年輪気象学に関する講演会

ウンテラ松の年輪年代の分析報告などが講演された

 

有盛神社ウンテラ松分析も
奄美博物館

 

 奄美博物館は22日、同館企画展示室で開館30周年事業として「日本における年輪気象学研究と奄美」講演会を開いた。講師を名古屋工業大学の庄建治朗助教が務め、奄美大島のリュウキュウマツの年輪年代測定調査の概要や樹木の年輪測定調査の手法などが聴衆に語られた。有盛神社のウンテラ松は、サンプル調査の途中報告で年輪184本とされた。

 庄さんは、同大社会工学科で南西諸島・小笠原の年輪気候学など研究。総合地球環境学研究所プロジェクト「高分解能古気候学と歴史・考古学の連携による気候変動に強い社会システムの探索」にも参加し、奄美大島のリュウキュマツの大木を分析資料とした年輪年代測定調査を行っている。

 庄さんは、「年輪年代学は樹木年輪を用いた研究で、気候変動や環境学、考古学に応用もできる」と説明。「年輪から得られるデータ精度を向上させるのに、複数データからなるクロスデーティングで検討が必要」と語った。

 クロスデーティングで作成されたマスタークロノロジー(標準年輪パターン)は、「ドイツが約1万年、アメリカ西部は約8千年、日本が約3千年の年輪幅」と報告。「沖縄で長樹齢のリュウキュウマツからは、約200年までしか、さかのぼらない」と話した。

 ウンテラ松のサンプリングは、昨年3月15~16日に実施。庄さんが計測して、年輪184本で単純に考えると最初のものは1830年だという。

 庄さんによるとその他の分析はまだ継続中で、南西諸島の気候変動などを解明する貴重な資料と位置付けている。「江戸時代の天保の大飢饉=ききん=の影響が、本州のヒノキの資料には確認できたが、ウンテラ松の資料には見られなかったことから、当時は本州とは違う気候だった可能性がある」とした。

 「長樹齢のリュキュウマツの年輪を調べることで、数百年にわたる南西諸島の気候変動を高精度に復元できるかもしれない」として、庄さんは今後のサンプル収集の協力を呼び掛けた。