㈱南方新社はこのほど『奄美・沖縄諸島先史学の最前線』を出版した。同名のシンポジウムの書籍化として企画され、考古学や人類学など奄美・沖縄諸島の先史学に精通した研究者たちが中心となり執筆。最新の研究成果から、世界的に類例のない琉球列島で持続してきた数千年間の狩猟・採集生活の様相などを紹介する。奄美諸島5島の専門家のコラムも収録されている。
同書は、昨年1月に奄美市名瀬で開かれたシンポジウムにおいて、質疑応答で会場から寄せられた書籍化を希望するコメントや、奄美にとって貴重な記録となることから出版を構想。編著者の高宮広土教授(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)=写真=が、同社に打診し出版を快諾されたという。
同書収録の各論文で、▽いつごろ人類は奄美・沖縄諸島に住み始め、その人々はどこからやってきたか▽どのような生業戦略によって生存を試みたのか▽先史時代にどのような文化があったのか―のテーマで最新のデータをもとに検証。また考古学に関する章を2章追加し全6章構成に、奄美諸島と沖縄諸島などに関する新しい情報のコラム8本と充実した内容になっている。
高宮教授は、「奄美・沖縄諸島の先史時代の人と文化の解明に、考古学やそれ以外の関連分野との共同研究が不可欠。こうした学際的な研究が、日本の他の地域ではみられないほど奄美・沖縄では進展していて、約20年間で多くの新しい知見が理解されつつある」と解説。「研究者の間で共有されてきた新発見や新知見を、地元や一般の人々へ還元するものとして同書を活用してもらいたい」と期待する。
高宮教授は、「将来、先史学に関するデータの蓄積や学際的研究の進展があれば、次のシンポなど行いたい」と語った。
同書は、A5判で全190ページ、定価2500円(税抜き)で全国主要書店で販売されている。