鹿大島嶼研・研究会

鹿児島会場の発表をインターネット経由で聴講する島嶼研奄美分室会場の参加者

リュウキュウアユ 生態や保護取り組みなど講演
河内川での個体数減危惧 河口部埋立てなどで

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センターは23日、鹿児島市の同センター会議室などで第186回研究会を行った。講師から同大が30年以上行っているリュウキュウアユの個体数調査の結果などから、焼内湾(宇検村)に注ぐ河内川では今後の増加が期待できない恐れがあることが報告された。

 講師を、同大学水産学部の久米元准教授が担当。演題「奄美大島におけるリュウキュウアユの生活史」で、絶滅危惧種リュウキュウアユの研究成果や保全に向けた取り組みなどについて講演した。

 リュウキュウアユは奄美大島にのみ生息する希少種で、環境省の絶滅危惧Ⅰ類、鹿児島県の絶滅危惧種に指定。かつて沖縄本島にもいたが絶滅し、現在は奄美市住用町の役勝川から移植した個体群をダム湖に定着させたという。

 久米さんは川と海で生活する点や、11月に水温20度以下になる時期に産卵を開始するなど生活史をスライド資料で解説。「奄美大島で同種が生息する主要な河川は、住用湾に流れ込む川内川、住用川、役勝川と宇検村の河内川の4河川になる」とした。

 本土のアユと違い、リュウキュウアユは成魚個体数が年ごとに大きく変動するのが特徴と指摘。エサとなるのは付着藻類としたが、「河川の生産力が低いなどの環境要因でトビケラ、カワゲラなども一緒に食べているのではないか」と推察した。

 久米さんは、河口部の埋立てなどで河内川に生息する個体群の減少を懸念する。「今後、個体数の増加は望めないだろう」と語った。

 保全上の脅威として、夏季の少雨による瀬切れ、外来種、カワウの増加などを挙げた。「外来種では奄美大島北部の大美川、半田川などで、ジルティラピアやグリーンソードテイルが繁殖しており、これらの外来種の生息域が広がらない対策が必要だろう」と話した。

 リュウキュウアユの保護のため、養殖技術の確立やアウトリーチ活動も紹介。「アウトリーチでは、地元小学校で川の生きものを学ぶ学習活動を行った」と報告した。

 会場からの質疑では、「年ごとの個体数の変動が大きいのはなぜか」や「大陸のアユとの相違点は」などの質問が出された。