ハンセン病家族被害の実態について講演した黒坂愛衣氏
ハンセン病を正しく理解する学習会「黒坂愛衣講演会」(奄美和光園と共に歩む会主催)が1日、奄美市名瀬のAiAiひろばであった。黒坂氏(東北学院大学経済学部共生社会経済学科准教授)は、ハンセン病家族に聞き取り調査したことを題材に「ハンセン病家族たちの物語」を出版しており、講演で家族被害の実態を詳細に説明し、差別のない社会づくりの大切さを訴えた。
2016年2~3月にかけ、元患者の子どもら家族が国に損害賠償と謝罪などを求め、国家賠償法に基づく集団訴訟(ハンセン病家族訴訟)を熊本地裁に起こした。第1次、第2次を合わせた原告は568人おり、奄美の原告もいる。今年4月27日までに第9回口頭弁論が開かれた。黒坂氏は昨年12月、熊本地裁で専門家証人として、家族から聞き取りした被害実態を証言した。
学習会には31人が参加。黒坂氏は「ハンセン病家族の被害について」と題して講演。
ハンセン病政策の家族への影響では①優生政策のもとでなされてきた人工妊娠中絶②隔離による引き離し(患者と家族が引き離された)、ハンセン病療養所附属保育所に入れられた子もいる③社会的差別の強化(固定化)―を挙げ、「原告が568人いるということは568の事例があるということ。陳述書を見ると大きな差別があったと思った。すごい消毒をしなければならなかった証言もあった」と述べた。
社会的差別による被害では、「30代の姉妹の事例として、父親がハンセン病と知った夫がその後、態度が変わり結局離婚となった」「40代女性の事例は、夫がハンセン病名簿の中に、女性の父親の名があることを見つけ、『俺をだまして結婚したのか』と非難。しゅうとめからは『あなたは専用タオルなどを使ってね』『あなたは子どもを産まない方がいい』と言われ、3年我慢したが、結局差別で離婚した」。
差別回避のための人生選択肢制限に関して①友達はつくらない②結婚はしないと若いころから心に決めていた③集落の集まりや祭りに行かない④自分の話は絶対にしない―などの証言があった。肉親がハンセン病だと最近まで知らないケースもあったという。
2003年に「れんげ草の会」(ハンセン病遺族・家族の会)が初めてできた。黒坂氏は「家族被害の実態を知り、差別のない社会づくりに取り組んでいかなければならない」と訴えた。
「国立療養所菊池恵楓園金陽会作品展『ふるさと、奄美に帰る』」が、奄美パークの田中一村記念美術館で開催中。5月13日まで。