「保護考え直し登録を」

公開講座で世界自然遺産の登録に関する講義を行った萩野教授

放送大学公開講座 エコツーリズム確立重要

 放送大学鹿児島学習センターは13日、奄美市名瀬の県立奄美図書館第1研修室で第62回公開講座を開いた。講師の鹿児島大学学術研究院の萩野=はぎの=誠教授が、「世界遺産登録は奄美に必要だったのか、語り合おう」のテーマで講義した。講師は世界遺産条約を保護の条例と解説。「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産推薦に関し、IUCNが登録延期勧告をしたことから、地元のためのエコツーリズムを成立させて保護を考えなおす機会とするよう提言した。

 世界遺産条約は、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」のこと。萩野教授は「地元のための条例でなく、一国を超えた普遍的な価値をもつものを全人類のために保護して活用する条約」と位置付けた。

 また世界遺産条約は、インバウンド(外国人観光者)ありきと指摘する。「インバウンド受け入れが義務であることを前提に、観光を考えなければならない」と語った。

 日本のエコツアーについて、89年の小笠原諸島のホエールウォッチングが起源と解説。奄美も水域のエコツアーとして、ダイビングが該当するとした。

 萩野教授は今回のIUCNの登録延期勧告に関し、「保護を考え直すにはいい機会。国立公園よりもハードルが高くなり、保護を要求される。登録になったら世界中の人を受け入れるのが当たりまえ」と示唆。「登録を目指すには、奄美のエコツアーで観光DMO(地域と共同して観光地域づくりを行う法人)の育成した人材によりツーリズムを確立させることが大事だろう」「エコツーリズムをしている人は、自然の前線にいて自然を守っている。これを活用し地域のためのエコツーリズムを成立させるべき」と語った。

 講義の後に萩野教授に、会場の参加者から質問や意見が行われた。「IUCNの勧告がなぜ延期となったか?どこが問題だったのか?」との質問に対し、「条約で保護が要求される。一例だがノネコ対策は奄美大島、徳之島のように、やんばるや西表は取り組んでいるのか。IUCNは全体をみて足りないと指摘した」と回答。他に国立公園の区域の線引きや、やんばるの北部訓練場返還地などに関した質問が出された。

 意見では「自然を守りながら、観光をするという話し合いが中途半端だった」「住民が必要性を理解していなかったのでないか」や、「外来植物の問題など未解決では、登録は実現しないだろう」「もし遺産登録されていたら、数年後に危機遺産になったかもしれない」など住民意識や外来種に関する課題があげられた。