サトウキビ低糖度対策や働き方改革への対応などに関し意見交換した「18年度さとうきびキャラバン及び増産計画フォローアップ研修会」
サトウキビ低糖度被害対策や働き方改革に関し農林水産省は15日、奄美市笠利町の笠利総合支所で「2018年度さとうきびキャラバン及び増産計画フォローアップ研修会」を開いた。行政担当職員や関係団体、製糖業関係者などに、17年産サトウキビの低糖度被害へのセーフティネット基金(さとうきび増産基金)の発動要件に糖度減少発生が追加されたことや、製糖工場の生産性向上に働き方改革推進を訴え関係者らと意見を交換。増産に向け土づくりや、適期株出管理の実施など産地一帯の取り組みの提言が行われた。
農水省は、国の施策などを産地で説明するキャラバンを実施。17年産のサトウキビ低糖度被害に関し、14日から同省担当者が奄美大島入りして産地の現況などを確認していた。
開会行事で、同省政策統括官付地域作物課加工第一班の伊藤博行課長補佐があいさつ。台風被害やそれに伴う塩害等で低糖度被害が発生したことから、対策にはサトウキビ本来の能力を引き出す栽培管理が重要と指摘した。
そのために土壌診断に基づいた土壌改良、収穫後の適期株出し管理で単収アップにつなげることが重要との見解を示した。「また台風の塩害は通過後に、できるだけ早く散水して塩分を洗い流すことで被害を軽減できる」。
18年度の国のサトウキビ生産支援対策として、自然災害からの回復取り組みを支援するセーフティネット基金(さとうきび増産基金)に当初予算7億500万円を計上。基金の発動要件に、新たに「自然災害などにより糖度減少発生」を追加。具体的には台風、病害虫、登熟期の高温などにより、収穫開始から1カ月間の平均買い入れ糖度が11・5度を下回った場合とした。
働き方改革について、時間外労働の上限規制が導入されることから、「製糖事業者には適用までの準備期間5年間で、人材確保や省力化などに支援が行われる」と説明。国の甘味資源作物生産性向上緊急対策事業で、製糖工場の労働効率を高める取り組みや働き方改革への対応が支援されるとした。
続いて県内の17年産の生産量や増産に向けた取り組みなどが、担当者から報告。低糖度被害は、最も低かったのは種子島の11・02度(前年産より1・98度減)で、次いで喜界島12・19度(同2・1度減)、徳之島12・49度(同1・38度減)で、県全体は12・39度(同1・59度減)だった。
増産計画で、▽経営基盤の強化▽生産基盤の強化▽生産技術対策―を課題と位置付け。大島本島さとうきび生産対策本部の担当者は、「農家育成で栽培面積を確保し、機械化一貫体系を確立するため北大島ハーベスタ連絡協議会を設立した」などと説明した。
地力の増進に関する堆肥代替資材の購入助成を、農水省の伊藤課長補佐が「資材購入は収量アップとなるが、いわばカンフル剤。その後は農家が自発的に地力増進に取り組むとしなければ、いつまでも助成しなければならなくなるのではないか」と農家育成の観点からの実施を助言。「増産に向け、産地一体となり土づくりや適期管理などに取り組む必要がある」とした。
働き方改革の時間外労働の上限に関し、富国製糖㈱側から「複数月平均80時間を守るために二交代制では困難で、製糖期間を延長して対応した。規制の適用が猶予されるには」との質問も。農水省は「支援されるためには、製糖工場が今秋までに中期の整備計画をまとめる必要がある」と回答した。
その他に、「島内のサトウキビ農家に土壌診断を実施する」や、「熟練したオペレータによる株出管理の実施」に関する意見などが出された。