奄振審議会

奄振法の改正・延長に向け活発な意見が交わされた第110回奄振審議会

「自然保護を産業に」
延期勧告 早期の世界遺産登録目指す

 【東京】奄美群島振興開発審議会(会長・原口泉志學館大学人間関係学部教授)は17日、第110回会議を霞が関の合同庁舎で開いた。来年3月末に期限を迎える奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)では、法延長により世界自然遺産登録を生かした取り組みが期待される中、推薦に関しIUCNの登録延期勧告やその評価結果を説明。環境省から政府は早期に確実に登録を目指すとした報告が行われた。

 国土交通省から6人、環境省から1人、鹿児島県から3人、審議委員11人、奄美からは、奄美群島広域事務組合管理者として朝山毅奄美市長が、審議会委員として大和村の伊集院幼村長(大島郡町村会会長)らが出席した。

 原口会長が司会を務め、①奄美基金の役割の検証に関するワーキンググループにおける検討結果の報告②「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」に関するIUCN評価結果及び勧告の概要について③意見具申骨子案の検討―などが討議された。

 奄美基金の役割検証では、国土交通省から、世界自然遺産登録に向けた動き、LCCの就航、NHK大河ドラマ「西郷どん」などの好影響で入込客数の伸びが見られたと説明。「追い風」の一方でホテル不足などの課題も指摘され、「奄美基金に求められる役割は大きくなっている」とした。

 保証業務、融資業務に加え、事業者への支援体制の強化、起業・経営改善に関するセミナーの開催などで財務面・運用面のアドバイスなどコンサルティング機能も充実。マンゴー農家への融資は、新規農者へのハウス資金など、地域に密着した支援で産業振興を下支えしている。

 奄美基金は「一般の金融機関と相互協調し、資金の供給を行うべき。奄美発のイノベーションを国内外に発信していく可能性も秘めており、そのための政策金融機関として、積極的に寄与していく」などの報告が寄せられた。

 世界遺産登録申請の延期に関しては、環境省自然環境計画課の奥田直久課長から報告があり、延期の理由として「遺産価値の証明に不必要な分断された小規模な区域が複数含まれていること。沖縄の北部訓練場返還地が重要な位置づけにあるが、現段階では推薦地に含まれていない、などから生態系・生物進化においては、基準に該当しない」と説明。一方延期の理由を改善することで、基準に該当する可能性があるとした。

 絶滅危惧種や固有種の生息地であるという点で、IUCNは四島が世界遺産としての可能性を有していると評価。外来種対策の推進、観光管理の仕組みの構築、絶滅危惧種や固有種等のモニタリングの実施などの対応がIUCNから要請された。

 奥田課長は、「悪い評価とは思わない。政府は早期に確実に登録する目標を持っている」と述べた。

 県からは、▽農林水産業の振興については、加工品の輸送コスト支援▽情報通信産業等では、光ファイバーの整備促進▽観光開発では、沖縄を含めたアイランドホッピングの実現やインスタグラムの活用▽その他に交通施設の整備、災害復旧、防災対策を推進―などが挙げられた。

 審議会委員からは、ANAホールディングス㈱の大川澄人常勤監査役から、「奄美基金は5年ごととのことだが、50年、100年後を見据えた取り組みが大事ではないか。どういう奄美にしたいのか、どういう奄美が自分たちの奄美なのかを考え、昔からのものを大事にしながらも、これからの奄美らしさを作っていく必要があるのではないか」。奄美群島環境文化総合研究所代表取締役の小池利佳さんからは、「観光には地元の意識と、交通事業者との連携が必要なのではないか。自然保護を産業にしていくことで、暮らしと環境、観光にもつながっていくのではないか」との提案もあった。