松くい虫被害

奄美の松くい虫被害は徳之島で目立っている(徳之島最高峰の井之川岳)

徳之島が9割以上占める
17年度まとめ 拡大傾向、奄美大島は回復

 県大島支庁林務水産課は、2017年度松くい虫被害発生状況をまとめた。奄美全体の被害量は前年度比52・2%減と半減の2万400立方㍍だった。奄美大島では被害回復が進む一方、徳之島は徳之島町や伊仙町で松枯れなどの被害が拡大傾向にあり、徳之島全体で奄美の被害の9割以上を占めている。

 松枯れは体長約1㌢の線虫・マツノザイセンチュウがマツの樹木本体に侵入し引き起こす現象。マツノマダラカミキリが線虫を運び、被害は拡大する。感染によりマツは樹勢が衰え、葉は赤茶色に変色してやがて枯れる。奄美では1990年代に瀬戸内町加計呂麻島で松枯れが確認され、以降、同島と同町を中心に被害量が増え、徐々に近隣へ飛び火。2010年度には8万8076立方㍍まで拡大し、奄美大島では北部まで広がった。

 最近の被害量状況をみると、15年度5万7200立方㍍、16年度4万2700立方㍍と減少。17年度は前年度の半分となった。島別は、奄美大島1040立方㍍(前年度比3・3%)となり96・7%減と大きく減少した。市町村別では奄美市(919立方㍍)がほとんどを占めるが、その大半は笠利地区(799立方㍍)となっている。

 被害が著しいのが徳之島。全体で1万9316立方㍍に上り、奄美の松くい虫被害の94・69%を占めている。町別では徳之島町1万3790立方㍍(前年度比233・5%)、天城町2508立方㍍(同64・4%)、伊仙町3018立方㍍(同518・6%)。前年度より天城町が5倍以上、徳之島が2倍以上も拡大した。被害量が最多の徳之島町は奄美全体の7割近くを占める。

 奄美での松くい虫対策は、枯れた松を伐倒してビニールに包み、燻蒸=くんじょう=する伐倒駆除が主流。希少野生動植物が多く生息することから、本土で効果のあった薬剤の空中散布は実施されていない。

 県、市町村は17年度に事業費1億4700万円を投入し、伐倒駆除1372立方㍍、枯損木対策1644立方㍍、薬剤樹幹注入277本などの対策を進めた。今年度も引き続き同様の対策を進めていくが、同林務水産課は「松の伐採後には広葉樹の更新が進んでいる。こうした状況を注意深く見守っていきたい。被害により松が枯れている場合、強風をもたらす台風などの際に倒木する危険性があり、周辺を通行するときは注意してほしい」と呼びかけている。