奄美市名瀬の奄美観光ホテルで行われた「奄美群島希少野生生物保護増殖検討会」
2015年度第2回「奄美群島希少野生生物保護増殖検討会」(事務局、環境省・那覇自然環境事務所)が23日、奄美市名瀬の奄美観光ホテルであった。希少種3種(アマミヤマシギ・オオトラツグミ・アマミノクロウサギ)の生息状況の把握・モニタリング状況などを報告。ノネコ対策では検討委員らが、徳之島が積極的に捕獲・譲渡を進めていることに触れ、「奄美大島ではノネコ対策が遅れている。市町村が早く検討してもらえないことには先に進めない」と強く訴えた。
アマミノクロウサギについては、前回会議の意見を踏まえて、アマミノクロウサギ生息状況とマングースの減少関係を検証する資料を提示。▽マングースの密度がかなり小さくなったが、大幅なフン粒密度の増加が見られないエリア▽もともとマングースは少なかったが、捕獲が進むにつれてフン粒密度の回復が見られるエリア―などが示された。
環境省では「アマミノクロウサギの増加要因にマングースの減少以外の要因も考えられる。より適切に個体群の変動を評価するための見直しが必要」としており、委員からは「食性や環境を比較する資料もほしい」などの要望があった。このほか、希少種3種に関しては、調査方法の見直しなども検討が必要とした。
傷病個体の取り扱いに関する意見交換では、現状では傷病個体を受け入れる施設が無いことなどから、野生復帰が出来ない個体の収容施設の必要性などを指摘。また、死亡個体が発見された後の対応についても、「死体が新鮮なものなら、環境省だけで終わるのではなく獣医や大学などで病理解剖すべきでは」「今後、同じような症状の個体が持ち込まれた時は伝染病などを疑う必要もある。情報の公開と、体制作りは必要」などの意見もあった。
ノネコの問題については、徳之島が実施するノネコ捕獲調査を例に、「奄美大島ではなぜ進まないのか」という指摘も。ノネコの捕獲をするにも、順化させるための一時収容施設が必須となるが、奄美大島では設置場所や人材などは決まっていない。委員らは「捕獲を進めるためにも施設の設置は必要だが、奄美大島では確実に進んでいるわけではない。検討会としても、奄美大島の市町村に検討してもらうよう要望したい」とまとめた。