敷地内禁煙を掲げる奄美市内の飲食店(写真はCOVOTANA)
登録店に交付されたステッカー
室内などの環境で他人のたばこの煙を吸わされる「受動喫煙」の対策強化に向けた健康増進法の改正案が19日、衆院本会議を通過した。人の出入りの多い施設内を禁煙とし、罰則も設ける。政府は2020年4月の施行を目指している。施設側には今後の対策を義務付けるが、奄美市内の飲食店関係者は「喫煙可の営業スタイルを急には変えられない。常連客も戸惑う」と対応に苦慮する声が聞かれた。
改正案は、学校や病院、行政機関など人の利用が多い施設の敷地内を原則禁煙。専用室内でのみ喫煙可能で、違反した場合、罰則(過料)の適用などが盛り込まれた。飲食店については、客席面積が100平方㍍以下など条件を満たす既存の小規模店に対し、例外として喫煙を認める内容だ。
県は生活習慣病予防対策の一環として、受動喫煙防止を推進。全面禁煙に取り組んでいる飲食店や喫茶店を「たばこの煙のないお店」として登録し、「終日禁煙」「終日灰皿を置かない」「(屋外に喫煙場所がある場合)受動喫煙の防止配慮している」の要件を定め、登録店には登録証とステッカーを交付する。
登録店は県ホームページで公表され、6月11日現在、鹿児島市を除く県全体では423店舗。そのうち奄美群島は奄美市が最も多く11店。以下、徳之島町5店、瀬戸内町・喜界町・伊仙町は各3店など、8自治体29店舗を紹介している。
奄美市笠利町の「奄美きょら海工房笠利店」は建物全体を禁煙。オープン当初から禁煙営業を実施しているという吉永博文店長は「来店者が食事を楽しむ気持ちを大事に、今後も禁煙営業を続けたい」と話した。
同市名瀬大熊町のカフェ「COVOTANA(コボタナ)」も12年前のオープンから2年後には店舗を禁煙化。久野優子代表は厨房と客席がつながっている店内のため「メニューの風味を損なわないよう、禁煙化は必然」。市内店舗は営業開始から禁煙スタイルを掲げる傾向がみられた。
一方、喫煙可としている市内の飲食店は客席テーブルごとに灰皿を置く。客層は男性が多く、着席時にタバコをすぐに取り出す姿も見られた。20年以上、ランチ営業する飲食店関係者は「愛煙家の常連が多く、食事後の一服を特に好んでいる」。別の店舗関係者は「喫茶店のイメージからコーヒーとタバコをセットで楽しむ客が多い」として、顧客ニーズを考えると禁煙化に踏み切れない事情を明かし、客離れに強い懸念を示した。
ある飲食店責任者は今回の改正法案について、「2年間の移行期間で少しずつ(禁煙化の)理解を積み上げていくしかない」としながらも、店舗規模が喫煙室の設置規定に引っかかるため、施行後の対応に頭を悩ませているという。
県は禁煙化が世界的な動向であることから、「受動喫煙防止」の意義を強調。また名瀬保健所は奄美への入込み増加を踏まえ、社会環境の向上を示唆した上で、引き続き、管内の飲食店舗に対し取り組みへの理解を呼びかけていく方針だ。