肥後さん(奄美市笠利町)純黒糖づくり

秋頃からの本格的な商品製造を前に完成させた、肥後さんが作る純黒糖

「深みある味食べてほしい」
秋頃の製造開始めざす

 奄美市笠利町万屋でサトウキビを栽培している農家の肥後安美さん(73)は、自身が子どもの頃に好きだった、純黒糖の味を再現しようと昨年から試作品を作り続け、このほど商品化についても目処が立ち、秋頃からの製造開始に向けて現在準備を進めている。「加工糖に比べて深みがあって美味しい。付加価値のついた黒糖をみんなに食べてもらいたい」。味見した周囲からの評価は上々で、特産品売り場やホテルなどでの販売も目指している。

 肥後さんは同集落に、約6㌶の畑を所有し、50年ほどサトウキビを栽培。同町など奄美大島北部はなだらかな地形を生かし、サトウキビづくりが盛んな地域で、大型製糖工場の富国製糖はもとより、黒糖を作っている工場など幾つもある。

 肥後さんの住む集落にも過去製糖工場があったが、時代とともに消滅。「昔二つあったが途切れてしまって…。親たちが作っていた黒糖を商品として出せたら、付加価値も上がって良いのでは」。そのような思いがきっかけになったという。

 3年ほど前から、圧搾機をはじめ、撹拌機など製造ラインに必要な機械を徐々に買いそろえ、昨年暮れ頃からは、自宅で試作品づくりにもつとめて準備を進めてきた。「温度調整が上手くいかず固まらなかったり、味が出ていなかったり…」失敗を繰り返しながら、このほど商品として販売もできる味が安定して作れるようになった。

 1袋150㌘の純黒糖が入ったサンプル品を集落の人、知人らに配ったところ好評。「試作品のことを聞きつけて、分けてくれという人もいた」。肥後さんがこだわる純黒糖は、搾り汁だけをじっくり煮詰めて作る。「まだ試験的だが、1回で15~20㌔の純黒糖を作る場合、2回目からは早いが、最初の窯は火をつけてから2時間くらいかかる」という。

 工場は、農業機械を置く倉庫の一部を改修し、製造ラインを設置する予定で、秋頃から本格的に製造をスタートすることを目指している。「サトウキビは昔から人々の暮らしを支えてきた」、「子どもたちに作り方も見てもらい、奄美の伝統食品について理解を深めてもらいたい」。