「共生型サービス」開始

「共生型サービス」開始

高齢者と障がい児者が共に利用できる「共生型サービス」を提供しているデイサービス和月龍郷。開始から1カ月が過ぎ、県本土からの視察の打診もある

多様性ある社会実現へ
複数の専門職関わり情報交換
デイサービス和月龍郷

 介護保険制度の改正で、今年度から新たに「共生型サービス」が創設された。高齢者と障がい児者が同一の事業所でサービスを受けることができるもの。㈱和月(白浜和晃社長)が運営する龍郷町のデイサービス和月龍郷では7月から、自立訓練(機能・生活訓練)でこの新サービスを提供している。サービスの縦割り・領域を超えることで多様性を認め合う社会実現の場となっており、複数の専門職が情報交換しながら幅広く関わっている。

 共生型サービスは、▽障がい者が65歳以上になっても使い慣れた事業所でサービスを利用しやすくする▽福祉に携わる人材に限りがある中、地域の実情に合わせて人材をうまく活用しながら適切にサービス提供―の観点から創設された。ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイなどで提供できる。

 実施にあたり、和月では5月末に県に申請。1カ月間の審査を得て認可を受け、7月1日からサービス提供が可能となった。統括マネジャーの白浜幸高さんは「これまでの国の方針は対象者別・機能別だった。これからは、それぞれの領域を超えて専門性のあるサービスを提供できる。人口減少、担い手不足といった問題にも対応できるのではないか」と話す。共生型サービス提供は奄美で初めてで、県内でも先駆けた取り組みという。

 2015年6月に開設されたデイサービス和月龍郷では、当初から通所介護のほか、龍郷町の認可を受けた基準該当サービスとして、身体障がい者への自立訓練を実施してきた。また、発達障がい児などを対象とした児童発達支援と放課後等デイサービスを提供する「発育サポートハートリハ龍郷」を併設。子どもから高齢者、障がい者と多様なサービスを提供。「地域社会にはさまざまな人々が暮らしている。分け隔てることなくみんなが一緒の空間を作り、それぞれに専門性あるサービスの提供を目指してきた。これまでの取り組みや方向が介護保険制度で認められたと言えるのではないか」(白浜さん)。

 龍郷町で行われているデイサービスは月~金曜の週5日間で、高齢者37人、障がい者4人(知的・身体)、子ども24人が利用。専門職は理学療法士、介護福祉士、作業療法士、保育士、看護師の5職種の職員が配置されている。リハビリをメインにしたサービス提供だが、当初は障がい者や子どもたちの利用に高齢者から戸惑いの声も聞かれたという。

 そこでサービス内容や目的を利用者全体に分かりやすく伝えるためメニュー化し掲示したところ、お互いに理解し合うように。また、懸命にリハビリに取り組む子どもたちの様子を見て励まされる高齢者も。週4回は通うという76歳の男性は「子どもたちと触れ合うことが楽しみ。頑張る姿を見ることで、こちらもまだまだリハビリに頑張りたいという気持ちになる」と笑顔で語った。

 多様性を尊重した共生型サービスを実現するには職員の連携も欠かせない。高齢者を対象に支援してきた介護福祉士のなかには、これまで対象でなかった障がい者支援に不安を漏らすこともあった。白浜さんは「福祉だけでなく医療的な知識・技能が必要となった場合には、同じ事業所内に看護師や理学療法士もいるだけにカバーできる。みんなで一緒にサービス提供に取り組むという方針で、職員間で情報交換しながら助け合っていきたい。メインはそれぞれの専門職だが、専門外でもサブとして関わることで共有できる」と語る。

 介護福祉士の中山亮さんは「障がい者の自立訓練のほか、子どもたちの療育にも接することで学ぶことが多い。一つの社会の形成に貢献できているという誇りが持て、とてもやりがいがある」と話した。