奄美の魅力発信する絵本出版

絵本を出版した渡博文会長

外からの視点でケンムン描く
渡博文ゆめ基金を活用

 奄美に伝わるケンムン伝説を題材にした絵本が誕生した。渡博文ゆめ基金事務局は31日、奄美市名瀬の㈱奄美大島開運酒造で宇検村ケンムン物語『ケンムンとぼくの夏』の出版を報告した。同事務局は絵本を出版することで、奄美の豊かな自然や自然への畏敬が含まれた伝説を広く発信できるとしている。絵本は10日から、市内の書店で販売予定。

 同基金は同社と奄美観光㈱の創業者である渡博文会長が、「子どもたちが夢(大志)を抱き、その実現にチャレンジする人財に育つよう支援する」目的で設立。渡会長が基金に私財を提供し、教育振興や文化振興、地域振興に関する活動などに同基金が主催または後援する事業に助成を行う。

 同基金が最初に取り組む事業で、「ケンムン伝説」の絵本出版と普及を企画。昨年春ごろに京都市在住の著名な絵本作家の永田萠さん(姫路市立美術館館長、京都市こどもみらい館館長)と出会い、宇検村を舞台にした絵本の制作を依頼した。作家が3度現地入りして取材した上で、オリジナル絵本の作成を快諾したという。

 絵本は、伝説を知らない東京から初めて奄美に来た男の子を主人公に設定。宇検村の各地を訪れ、人々とのふれあいなどを通して興味のなかった様々なことに目覚め、ひとまわり大きくなり東京に戻って行くストーリー。

 色彩豊かな作風と独特の技法で「カラーインクの魔術師」ともよばれる作家の本領が発揮され、同村の風景などをカラフルに描写。また英文訳も巻末に掲載され、「外国からの旅行客などにも読んでもらえるのでないか」としている。

 出来上がった絵本について同基金事務局の赤崎綾乃さんは、「絵本は子どもたちの自然への畏敬の念を思い起こさせ、創造力豊かな心を育むことにつながる。お土産にもできるので、全国に奄美を発信できるのでは」と話した。

 渡会長は、自身が長年あたためてきたケンムン伝説が絵本になったことを喜び「ケンムンは子どもたちなどに危ない場所や、してはいけない行為を教える教育になるような存在。世界自然遺産登録を目指す上で、子どもたちには奄美の自然とそこに育まれた文化を未来への指針として受け継いでもらいたい」と語った。

 同書は、A4変型判で全36ページ、定価1400円(税抜き)。

 問い合わせ先は、渡博文ゆめ基金事務局℡0120―52―0167。