徳之島3町では、今年度からCG病の根絶確認に向けた本格調査が始まっている(伊仙町での防除活動)=提供写真=
県と徳之島の3町などは、カンキツ類に甚大な被害を及ぼす重病害・カンキツグリーニング病について、根絶確認に向けた本格調査を今年度から実施している。順調に進めば2022年には根絶が達成される見通し。12年の喜界島に続くことが期待され、防除活動が現在も行われている、沖永良部、与論の2島の根絶に向けても弾みがつきそうだ。
カンキツグリーニング病(CG病)は、主にカンキツを宿主とするミカンキジラミによって媒介される細菌病。2002年4月に与論島で初めて確認されて以降、沖永良部島、徳之島、喜界島でも感染樹が相次いで確認された。
CG病に感染した樹木は、樹勢が低下し数年後には枯死する。奄美群島各地ではタンカンをはじめ、在来カンキツ類などが栽培されており、被害拡大の防止、根絶に向けて各自治体は取り組みを進めてきたが、03年に感染樹が見つかった喜界島のみ根絶に成功している。
徳之島でも03年に伊仙町を皮切りに、全3町で感染樹を確認。これまで調査、防除活動などが継続されてきた。2017年度までに、島内で合計568本の感染樹が確認された。
島全体の根絶に向け、3町はそれぞれに同病専門の専従防除員を配置。16年度からは、合同で各地点抽出調査を行うなど、島一体となった根絶への取り組みを強化してきた。
調査は感染が疑われそうなカンキツ類、媒介虫が好んで寄生するゲッキツなどの木からランダムに葉を採取し、PCR検定(遺伝子解析)で感染の有無が判断される。ただし「木のどこで菌が検出されるか分からない。潜伏期間は2年とされる。何回も繰り返して(調査して)感染していないことを証明する必要がある」(県大島支庁農林水産部農政普及課特殊病害虫係)。
徳之島はタンカンの生産が盛んな地域。生産農家の多い徳之島町では、同町柑橘生産組合(是枝純一組合長、組合員約80人)も調査に動いた。各集落で1~3人の組合員たちが、媒介虫が好むゲッキツなどを調べてマップ化。母間でも中島藤雄元組合らで長昨年夏に実施した。「3人で2日ほどかけて調査した。隠れた場所もつぶしていく見込み。まだ油断できない。できるだけ今後も協力したい」。同町では、15年に8本(8地点)、16年3本(3同)、17年には2本(2同)の感染樹が確認されている。
近年の感染樹数が減少傾向にあることなどを受け、県と3町などは根絶確認に向けた本格調査を今年度から開始した。「昨年の調査では感染は2本のみ。根絶に向けた最終的な調査に入った」(同課)。これまで2回だった調査は年3回行われる。
根絶を目指してきた3町関係者の期待も高く「キジラミが減ってきたことを実感。今後も見回り、現地調査をやっていけば根絶できるのでは。願っているところ」(伊仙町経済課)、「現状では重点エリアで発生が認められていないので順調に行くのでは。エリア外も大丈夫だろう(あってほしい)」(天城町農政課)、「3町連携しており、組合員含め全体的な意識も高い。啓発も引き続き行うが、順調に行くものと思っている」(徳之島町農林水産課)。
3町に事業(カンキツグリーニング病緊急対策事業)を委託している大島支庁農政普及課は「カンキツは奄美の島それぞれに、独自の変異があるため、育種母材として、興味深いものがあり、将来に向けて大きな損失になることも考えられる」。
徳之島での根絶達成、他の島への波及にも期待を込め、同課は「確実に目標に沿って、撲滅できたら良い(できるだろう)。感染が確認された場合は、伐採というつらいお願いをすることになるが、地域の方々にも協力をお願いしたい」と話した。