世界自然遺産候補地科学委

世界自然遺産候補地科学委

2018年度第1回奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島世界自然遺産候補地科学委員会が開かれ、2月の推薦書の提出に向けた方針が示された

 

「生物多様性と絶滅危惧種」
勧告踏まえ推薦方針を了承
沖縄北部約2800㌶追加

 

2018年度第1回奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島世界自然遺産候補地科学委員会が12日、鹿児島市の宿泊施設であった。来年2月の推薦書の再提出に向けて、IUCN勧告への対応などに関して方針案が示された。登録のための要件である評価基準(クライテリア)の対応については、勧告を踏まえ、「生物多様性と絶滅危惧種」に絞り、
推薦区域等を修正する方針を了承した。沖縄県島北部の返還地約4000㌶のうち、約2800㌶が新たに推薦区域に追加される見通しとなった。

会には委員、事務局、行政関係者など約50人が出席した。冒頭では、再推薦にかかわる経緯ほか、IUCNの評価結果、勧告の概要などが説明された。

クライテリアの適用に関し、IUCNの指摘事項も踏まえ、境界線の不適切な設定を修正すれば、推薦資産はクライテリア(ⅹ)「生物多様性と絶滅危惧種」に合致する可能性があるとし、年内に開く第2回会合でこれを盛り込んだ修正原案を示すとした。

沖縄北部において、米軍訓練場跡地(約4000㌶)が返還され、今年6月に約3800㌶が国立公園に編入されたが、推薦区域として約2800㌶が新たに追加される見込み。「断片化した推薦要素のほとんどがひとまとまりの大きな要素としてつながり、完全性が強化される」としている。

推薦区域と緩衝地帯との境界修正に関する考え方としては、北部訓練場の返還地の一部について、国立公園および森林生態系保護地域に設定▽西表島の北部・北西部の河川について、推薦区域への一部編入を検討する▽歪な境界については見直しを行う―などを挙げた。

会では、各委員から方針案について質疑をはじめ、助言もあり、環境省、林野庁などの事務局をはじめ、鹿児島・沖縄両県との連携はもとより、地元の住民の意識醸成の重要性も強く指摘された。

今回クライテリアに関する方針が決まったことについて、環境省は「勧告の指摘のなかで重要だった部分について、方針を認めてもらったことは重要」とし、2月の推薦書提出に向けて、同省那覇自然環境事務所・東岡礼治所長は「まだまだ、世界自然遺産について理解が深まっていない部分もある。提出される前に地域の方と協力できる体制を作っていけたら」、「(登録までの)2年を使い、登録された時にしっかり保護管理できる体制づくりを関係機関、自治体と協力してやっていきたい」と話した。