奄美ドクヘリ飛行時間 全国平均の約2倍

17年度の出動実績など協議した奄美ドクターヘリ運航調整委員会

緊急要請に対応で問題化
運航調整委 施設間搬送の緊急性検証へ

 奄美のドクターヘリ事業の効果的な推進を図る目的で2日夜、奄美市名瀬の県立大島病院で2018年度奄美ドクターヘリ運航調整委員会(25機関、委員27人)が開かれた。事務局から17年度の出動実績の報告などがあり、搭乗人員や出動要請最終時刻といった運航要領の一部改正案を協議した。飛行時間数が全国平均の約2倍で、緊急要請への対応の問題など想定。施設間搬送の緊急性を検証する組織見直しなどが話し合われた。

 会の冒頭で、委員長選出と副委員長の指名を実施。委員長は県立病院局の福元俊孝事業管理者が再任され、副委員長には県立大島病院の石神純也院長が指名された。

 福元委員長が議長となり、議事を司会進行。議事では17年度奄美ドクターヘリ出動実績報告書(案)や、奄美ドクターヘリ運航要領の一部改正(案)などについて質問や意見が交わされた。

 17年度の出動件数は523件で、当初の予想数200~250件の倍以上。523件のうち現場出動が230件、奄美大島以外から県立大島病院への搬送や、県本土や沖縄県への施設間搬送が262件、出動後のキャンセル31件となっている。

 この施設間搬送が多いことが奄美ドクターヘリの特徴で、要因として救急車での搬送が困難な離島が点在していることを挙げている。現場出動に要した平均的な経過時間は、7分36秒と前年度より1分36秒短縮。施設間搬送出動に要した平均的な経過時間は、93分と前年度より3分短縮した。
 総飛行時間は約509時間で、全国平均の約255時間の約2倍。この事態が続くと重複要請が増加し、緊急の要請に対応できなくなるなどの問題が想定されるとしている。

 運航要領の一部改正では、搭乗人員に機長や搭乗医師が必要とした人などを搭乗できるようにする改正や、航空法順守のため出動要請最終時刻を最大1時間繰り上げる改正を協議。出動件数の半数以上を占める施設間搬送について、「その搬送に緊急性があるかどうかなどの検証を行い、奄美における施設間搬送のあり方を考えてもらいたい」といった意見が出された。

 県立大島病院の救命救急センターの原純センター長は、「予測以上に飛行時間が長いことに驚いている。ドクヘリは現場に行き患者の治療を開始するのが目的だが、施設間搬送が延びると現場への出動が減ってくる。(事例を検証して)整理する時期に来ているのでないか」「消防などと密度の濃い連携が取れている。奄美ドクターヘリの導入で、県本土以上に切れ目ない連携が取れ、本土に負けないものができるだろう」と語った。