名瀬崎原中 紙すき体験

イトバショウの繊維をすき枠に溜めて引き上げ紙すきを行う生徒たち

イトバショウ繊維原料に卒業証書づくり

 奄美市名瀬の崎原小中学校(久野博幸校長、児童11人、生徒8人)は31日、同校美術室で卒業証書を作る「紙すき」の体験学習を行った。講師の説明や指導を受けて、生徒らは紙すきによる卒業証書などを作成。3年生は自分ですいて作った証書で、卒業式に臨むという。

 同校は昨年から、総合的な学習で「紙すき」による卒業証書の制作を実施している。講師を染色工芸家の安田謙志さんが担当した。

 安田さんは岐阜県美濃地方にゲットウの繊維で作った和紙があることを知り、奄美のバショウ類で出来ないか考えて2カ月の現地研修で「紙すき」の技法を習得。奄美に戻り沖永良部島の芭蕉布の技術者から、イトバショウの芯から糸を作る際に、使われない繊維を譲ってもらい紙づくりに利用している。

 安田さんは生徒たちに、「奄美大島には和紙の原料になる楮=こうぞ=・三椏=みつまた=・雁皮=がんぴ=がないことから、紙をすく文化がなかった」と説明した。生徒たちに「イトバショウから卒業証書を作り、それを卒業式に使い誇りに思ってもらいたい」と話した。

 安田さんは紙すきの技法を①流しすき②溜めすきの2種類を紹介。生徒たちは、初心者にもそう難しくない溜めすきでオリジナルの証書づくりに挑戦した。

 イトバショウの繊維を水を張ったたらいに入れ、水中でうまく繊維がばらけるようにトロロアオイの根から作る「ネリ」を入れてかき混ぜた。卒業証書のサイズのすき枠に、繊維を溜めるメッシュを挟み、たらいに入れてゆっくり水中から引き上げ紙すきを行った。

 生徒たちは初めての紙すき体験だったが、安田さんの助言を参考に1回の紙すきで証書や寄せ書きするA4サイズの紙の作成に成功した。

 3年生の瀧田未琴さん(14)と柴田波さん(14)は、「初めての紙すきで、繊維を均等にするのが難しかった」「自分の卒業式に使われるので、思い出に残る卒業式になるかもしれない」などと話した。