「奄美・沖縄」の再推薦決定

世界自然遺産候補地の核心地域である湯湾岳一帯

IUCN評価も要因、要請活動実る
世界自然遺産

 菅義偉官房長官は2日、閣議後の記者会見で「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島、沖縄両県)を世界自然遺産の候補として国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)に再推薦することを決めたと発表した。来年2月1日までに推薦書を提出し、2020年の世界遺産員会で国内5番目の自然遺産として登録を目指す。

 政府は「奄美・沖縄」について17年1月に世界自然遺産の候補に推薦することを決め、今年の同委員会で4島の審議に臨む予定だった。しかしユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)が5月、沖縄島にある米軍北部訓練場の返還地が推薦地に含まれていないことなどを理由に内容の抜本見直しを求める「登録延期」を勧告。遺産登録の可能性が低くなり、政府は6月に推薦をいったん取り下げていた。

 IUCNは「登録延期」とした理由について、「奄美・沖縄」の推薦地が分断され生態系の評価基準に合致しないことや、米軍北部訓練場の返還跡地が推薦地域に編入されていないことなどを挙げた。政府はこうした指摘を反映させて返還地を国立公園に編入しており、世界遺産の推薦地にも組み込み再推薦して登録を目指す。

 20年の同委員会から、各国が推薦できる候補が1件に減るため、文化遺産候補の「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道など4道県)と、どちらを先に推薦するか政府内で調整していた。有力視されていた文化遺産候補の推薦は見送りに。国内ではこれまで、知床(北海道)、白神山地(青森、秋田県)、小笠原諸島(東京都)、屋久島(鹿児島県)の4カ所が自然遺産に登録されている。

 この決定について、鹿児島2区選出の金子万寿夫衆院議員は奄美にとって喜ばしいことと評価。「文化遺産候補との競合があったが、『奄美・沖縄』が登録になると日本で最後の世界自然遺産になることや、推薦書をいったん取り下げて内容修正し再提出を目指すことになった経緯など判断してもらえた」と語った。

 金子衆院議員は来年ユネスコに「奄美・沖縄」の世界自然遺産が推薦されるように、これまで繰り返し県や地元市町村などと要請活動してきたという。また「奄美・沖縄」が優先された点について「勧告に対して迅速に対応し、奄美ではノネコ管理計画を策定して、7月から捕獲が始まったことなどが評価されたのでないか」と話した。

 金子衆院議員は「再推薦されることになり、2年後の登録が確実視される状況になった。これまでの登録に向けた郡民の取り組みをさらに強化し、幅広く課題に対応していくことが必要になるだろう」と語った。

 環境省自然環境計画課によると、「再提出の方針決定後に、外務省・文部科学省、環境省の三者で自然遺産と文化遺産の候補などの情報を話し合い共有し、それを基にして官邸で『奄美・沖縄』を推薦する方針が決定した」と説明。同課担当者は「推薦書をいったん提出してIUCNの評価を受けている点や、世界遺産委員会では自然遺産が優先的に審査対象になることなどが要因」とした。

 同省は再推薦にあたり、指摘された米軍北部返還地や外来種対策などに取り組んでいるとした。同課担当者は「9月の科学委員会で了承が得られたので、クライテリア(遺産候補の普遍的な価値)を生物多様性に絞り込んで推薦書をまとめ直す」と話した。

 鹿県の奄美世界自然遺産登録推進室の大西千代子室長は、「県で取り組んでいる世界自然遺産奄美トレイルや、利用適正化対策などに今後もしっかり対応していく。勧告で課題とされた奄美の推薦地にある分断地の解消にも努めていきたい」と語った。