デンマーク交流報告会

報告会ではデンマークの学校との国際交流から、観光と福祉を両立させる社会を考えた

「障がい者受入やすい環境」を
ユニバーサルデザインのあるまちづくり

 2年前、奄美市内で開催された「デンマーク国際交流シンポジウムin奄美」の初めての報告会がこのほど、同市名瀬のAiAiひろばであった。修学旅行で奄美大島に来島した同国の学校との交流を通じて、参加者は福祉と観光のあり方について意見交換。障がいの有無や性別にかかわらず、多くの人が使いやすい「ユニバーサルデザイン(UD)」を盛り込んだまちづくりについて考えた。

 2016年4月、障がいを持つ生徒と障がいのない生徒が共同生活しながら学校生活を送る「エグモント・ホイスコーレン」校の学生と学校長が来島。それをきっかけに障がい者の受け入れ態勢について考える国際シンポを開催。多くの市民が高福祉国家の取り組みを学んだ。

 報告会は同校受け入れのため当時発足した、行政や福祉、観光団体関係者でつくる「エグモント奄美受入実行委員会」(保宜夫委員長)の主催。委員や市民など約40人が参加した。

 来島した同校学生43人のうち、重度障がい者6人を含む11人が何らかの障がいを持っていた。報告の中で事務局は、生徒間で介護契約するシステムを紹介。「普段の生活で福祉環境がつくられている国」と説明した上で福祉先進国の姿から観光立国を目指すことを訴えた。

 意見交換で参加者からは「受け入れのあり方を考えさせられた」「奄美の注目が高まる中、社会整備の充実は重要」。また難聴障がいを持つ女性は「外見から障がいの度合いはわからない。さまざまな障がい特性に応じた整備も大切」と指摘。バリアフリーウォッチング、トイレマップの作成など優先して検討することで一致した。
 車いす利用の女性は「これからも多くの国内外から観光客が奄美に訪れる。バリアフリー化などを少しでも進めてほしい」と話した。

 重信千代乃事務局長は「奄美大島島内を含め群島内のUD取り入れは未整備な状況。自分の身になってわかる悩みをどれだけ救い上げられるか考えることが、観光を含め奄美の『おもてなし』の道しるべになる」と話した。

 同実行委員会は今後、社会福祉の向上に向けた施策を行政機関に要望する方針だ。