リンドウが掘り返された地点(龍郷町の山中で)
間もなく開花を迎えるリンドウのつぼみ
龍郷町の山中で開花期を迎えたリンドウが盗掘被害に遭ったことが15日までに、住民の情報提供で判明した。同種は固有種ではないものの、自生地は限られており、専門家は盗掘は種の存続に影響があると懸念する。
『奄美の四季と植物考』(大野隼夫さん著・2014年復刻)によると、リンドウは北方系の植物で、本州、四国、九州に普通で、奄美群島まで南下し奄美大島、喜界島、徳之島に産し南限分子として貴重。本土産のものより茎葉ともに小型で、一見別種のようにも見えるが、分類学上では同一種とされている。
花は径頂または上部葉えきに数個が集まってつく。花びらは5裂し、裂片の間には副裂片があるのも特徴。青紫の花色は秋にふさわしい色合。本土ではこの根を竜胆根=りんどうこん=として健胃剤に用いる。また観賞用としても栽培されると記載する。
鹿児島県がまとめた『改訂・鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 植物編―鹿児島県レッドデータブック2016―』では、分布特性上重要な種としてリストアップされている。
龍郷町役場の作業員らが14日、町内の山中で伐採作業に入った時にリンドウが咲いていた場所で、掘り返された痕跡を発見して町当局などに連絡。同町は植物の専門家などに伐採作業に入る前に照会するなど希少植物や固有種などの保護に注意をはらい、作業員たちに指示を行っているという。アサギマダラの吸蜜植物であるヤマヒヨドリバナも、そうした配慮で自生地が保護され南下するアサギマダラの助けになっている。
奄美大島5市町村でつくる奄美大島自然保護協議会パトロール員の山下弘さんは、「固有種でないが、奄美大島では自生地は限られている植物。こちらも現地で先日咲いているのを確認済。盗掘は種の存続に影響するので、被害が繰り返されないよう気を付けて巡回を続けたい」と話した。