市町村理解で安定運営

成年後見制度 国が地方交付税措置
あまみセンター 法人団体として始動し受任

 NPO法人あまみ成年後見センター(勝村克彦理事長)は今年度、法人後見団体として鹿児島家庭裁判所から承認され、事務を受任するなど活動している。ただ報酬を伴わない事務もあり、センターの今後の安定運営は見通せない。厚生労働省によると、市町村にはセンターのような中核機関設置と同時に、運営費の地方交付税措置が行われている。センターの安定運営には、地元市町村の理解のもと国の財政措置を活用した支援が求められそう。

 成年後見制度は、認知症高齢者や障がい者の増加で必要性が高まっており、判断能力が十分でない人に代わって、後見人が福祉サービス契約や財産管理などの支援をする制度。後見事務の範囲は、▽財産管理事務(財産の管理に関する事務)▽身上監護事務(生活および療養看護に関する事務)―があり、このうち身上監護では介護・生活維持、施設の入退所、処遇の監視・異議申し立て等、医療(入院程度)に関する事務などを対象にしており、福祉関係の事務でも重要な役割を担っている。

 センターが法人後見団体となったことで、こうした事務の受任が可能となった。家裁からの打診のもと、センターではまず1件(対象者=判断能力が不十分な補助人)、続いて2件(対象者=判断能力が著しく不十分な保佐人、判断能力が全くない後見人のそれぞれ1件)受任。なお、対象者が後見人の場合、全ての権限が代理人(センター)に与えられる。

 受任後、センターでは弁護士や司法書士などの専門家とも協議しながら支援員(奄美市市民後見人養成講座修了者)を決定し、支援活動を進めていくが、受任しているケースの対象者は報酬金を支払うことができない低所得者がほとんど。受任しても支援員の活動費が賄えない可能性がある。

 全国的にみて成年後見制度の利用者は増加傾向にある中、厚労省は利用促進に向けて基本計画を策定するとともに市町村の役割を明確化。市町村の役割としては、①市町村計画の策定(2018年度交付税措置)=必要なニーズの把握、体制整備の検討②地域連携ネットワーク構築と中核機関の設置運営(18年度交付税措置)=中核機関は市町村の直営または委託。広域設置も可。地域連携ネットワークの事務局機能、身近な相談窓口、個々の対応支援などを担いノウハウを蓄積③市町村長申立ての実施④成年後見制度利用支援事業の実施⑤担い手の確保―を挙げている。

 市町村での設置を求めている中核機関を担うのが、あまみ成年後見センター。勝村理事長は「市町村が設置する中核機関の運営費を国が支援(国の財政措置である地方交付税として)しており、成年後見人業務は本来、行政がやるべき仕事と位置づけている。ところが後見人には専門性があり、奄美大島の自治体では対応できていない。センターは中核機関としての役割を果たせるだけに、センターの安定的運営に向けて国の財政支援をもとに市町村の協力をいただけないだろうか」と語る。

 センター運営費としては年間500万円を試算。報酬費を支払えない対象者の後見人業務を担う社会性の高さを理解し、奄美大島の市町村が委託費として支出(財源は国が財政措置)できるかが、成年後見制度を地域に根づかせる一歩になりそうだ。