推薦書の保護管理や包括的管理計画の改訂など協議した奄美ワーキンググループ
環境省と林野庁、鹿児島県などは26日、奄美市名瀬のホテルで2018年度奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地科学委員会の「奄美ワーキンググループ」を開いた。関係省庁、行政機関などからの出席者が、再提出する推薦書の記載内容や包括的管理計画の改訂などについて協議。同科学委メンバーから、実効性ある取り組みを求める意見などが出された。
開会で同省那覇自然環境事務所の東岡礼治所長と、同庁九州森林管理局鹿児島森林管理署の山口輝文署長があいさつ。協議の議事を委員の鹿児島大学・米田健名誉教授が座長を務めて進行した。
議事で、▽推薦書における保護管理に関する記載内容の修正▽包括的管理計画の改訂▽モニタリング計画の基本方針―などについて協議。推薦書の記載内容について、同省担当者が配布資料で「勧告を受けクライテリア(遺産の普遍的価値)を生物多様性に絞り込み、細かく分断された推薦地も奄美大島は九つを一つにする方向で調整し修正する」などと説明した。
委員からは「前回の推薦書より詳細な記述になっている」と肯定的な声が聞かれたが、別の委員から「保護管理についてIUCN(国際自然保護連合)を納得させられるような実効性ある対策を盛りこんだ文面が必要でないか」との意見も出された。
包括的管理計画の改訂について、同省は修正する再推薦書と整合性を図るものと説明。委員からは「英語で概念が伝わりにくい用語をどう訳すのか」「日本の自然保護に対するアマチュアやボランティアの貢献を記載して、説得力を増すようにしてほしい」などの意見が出された。
モニタリング計画について、同省から基本方針案を説明。期間を10年間とし、中間の5年や終了時点で継続変更を検討するとした。
委員からは、基本方針を肯定する意見があったが、「計画で持続的な観光利用に関し、沖縄県が外れているので環境省と密な連携をとってもらいたい」との注文が付けられた。
またその他として、奄美・沖縄の遺産候補地での希少動植物の違法採集行為への対策を協議。東岡所長は「どれだけ実効性ある取り組みできるか。警察との連携、取り締まりを強化していきたい。次回の科学委員会で報告できるようにしていきたい」と語った。
閉会で県自然保護課奄美世界自然遺産登録推進室の大西千代子室長があいさつ。「奄美ワーキンググループで協議いただき指摘された事項など関係機関と対応していく。今後も登録に向け取り組んでいくので指導助言をお願いしたい」と話した。
閉会後に報道陣の取材に対して、米田教授はいい会議だったと強調。「IUCNから強く求められていた、候補地もまとめる方針となった。IUCNへの説明も納得してもらえるのでないか。『実効性』に関して、PDCAサイクル(計画から改善まで取り組み良くなるよう継続していくこと)を回しながら高めていく必要があるだろう」と語った。
東岡所長は「来年2月の再推薦が決定しているので、地元や研究者などからの指摘を踏まえて、よりよい形で推薦書をまとめていきたい」「きょうの会議で、より実効性のある管理を求める意見あった。どのようにして実効性を保てるか見直していきたい」「4島で24カ所の構成要素に分かれていたが、1島で一つあるいは二つにまとめていく。現時点で五つ(徳之島を2カ所)の構成要素にまとめる方向で調整。しっかり推薦書を修正し、現地調査に向け準備していきたい」と話した。
今回の意見等は30日に実施される沖縄ワーキンググループでの意見等も合わせ、次回開催の第2回科学委員会に反映される。