「津之輝」前年並み実績

年末の贈答用需要がある「津之輝」。12月集出荷でJA共販も高値で取り引きされただけに、早出し・未熟果の流通は産地の信頼を失うことになる(資料写真)

量販店など出荷、高値で取引
早出しメリットなし「適期収穫を」
JA共販2年目

 JAあまみ大島事業本部は昨年から新かんきつ「津之輝」の共販に取り組んでいるが、2年目の実績は1・5㌧で、前年並み(1・2㌧)だった。量販店などに出荷したところ食味・食感の良さが好評で、お歳暮需要も反映し高値で取り引きされた。

 同本部経済課によると、JAでは品質保証が可能となる光センサーが整備されている奄美大島選果場(奄美市名瀬朝戸)で津之輝を受け入れた。期間は今月10~23日まで。共販の出荷先は、共販前から試食販売など販促活動の場となっていた新潟県にある量販店と東京の通販会社。キロ当たり平均単価は前年並みの700円で取り引きされた。

 取り扱われた果実のサイズは2L・Lサイズが主体。光センサー選別を行っているため品質は折り紙つき。年末の贈答用として直接JAへの注文もあり宅配で対応したが、完熟品はタンカンに近い紅がのった外観、糖・酸のバランスと食感の良さに、「もっと購入したい」との声が寄せられたという。JAは「外観は台風被害で果皮に傷があるものが目立ったが、味は間違いない。津之輝の評判はとてもいいだけに、販売面で量がほしい。防風垣を整備しての台風、裂果、かいよう病などの対策が必要で栽培が難しいためか、選果場への持ち込みは名瀬地区や住用地区などの実績のある農家にとどまった。生産の安定が課題」と指摘する。

 品質が安定しないポンカンに代わる年末の贈答用として津之輝は奄美大島に導入され、行政も苗木助成に取り組むなど産地づくりを後押ししている。こうした中で関係機関を落胆させたのが、一部の農家による早出し。11月に収穫された未完熟の津之輝が地元市場に持ち込まれ流通。地元の青果店で購入した消費者が、12月に適期収穫された完熟品と味を比較。「こんなに美味しいミカンだったとは。11月に購入したものは外観・味とも悪かった」との感想が生産者に寄せられ、未熟果の流通が発覚した。

 JA大島事業本部果樹部会の大海昌平部会長は「かいよう病被害に遭い、廃棄しなければならないような果実が流通したことを深刻に受け止めている。産地づくりの足を引っ張るような行為であり、二度と繰り返してはならない。農家は加工用として出したつもりでも、今回のように生果用として流通することがある。肝に銘じたい。かんきつ類は台風被害で生産量が少ないだけに、早出し・未熟果が持ち込まれてしまうと今後のタンカンの販売にも影響するのではないか」と懸念する。果物本来の特性が引き出される適期収穫の意識が、あらためて生産農家に求められそうだ。