鹿児島大学島嶼シンポ

鹿児島大学島嶼シンポ

4人の研究者が登壇し奄美の産業振興などについて講演して討論を行った

奄美の産業 研究者が現状・未来分析
「有望種も」「販売・生産性向上」「海外開拓を」「地元からの研究支援」

鹿児島大学国際島嶼教育研究センター(島嶼研)は奄美市と奄美群島広域事務組合と共催で2日、同市名瀬のAiAiひろばで鹿児島大学重点領域研究(島嶼)シンポジウム「奄美群島における産業の振興―現状・課題・展望―」を開いた。奄美を調査エリアとする研究者が、奄美の産業の現状や課題などを講演した。総合討論もあり産業振興の今後の展望や、島嶼研奄美分室に大学生を派遣して活用する意見などが出された。

開会で同大の前田芳實学長があいさつ。島嶼研の河合渓センター長が、島嶼シンポジウムの趣旨説明を行った。

シンポに同大が擁する4人の研究者が登壇。農学部の山本雅史教授は、「奄美群島における果樹産業の現状と未来」の演題で講演した。

山本雅教授は、果樹園芸の特徴や奄美に見られるかんきつ類を解説。「奄美は亜熱帯気候で、亜熱帯果樹のタンカンが有力。『平井Red』や『津之輝』といった有望な種も出て来ている」「今後は他地域では生産が困難な果樹の生産を推進し、果実を原料とした加工品の開発が望ましい」などと述べた。

水産学部の鳥居享司准教授は、「奄美群島の漁業の今後を考える」を講演。県内各地の水産加工品づくりの事例を紹介し、「奄美はLCCなどでたくさんの消費者が訪れており、販売力や情報発信力ある民間企業と連携し、販売力を向上させる取り組みが必要だろう」と語った。

法文学部の山本一哉教授は「奄美群島の基幹産業を考える―紬・糖・焼酎産業―」の題で報告。基幹産業の現状にふれ産業振興について、「海外市場などの積極的開拓や、新しい基幹産業の育成、外国人観光客の取り込み」などを提言した。

学術情報基盤センターの升屋正人教授は、「奄美群島における情報通信基盤整備とその利活用」を講演。「情報通信産業は働く場所を問わない。課題は働き手がいないことや、生産性向上を図る点」と説明した。

東美佐夫副市長が4人の講演にコメント。続いて島嶼研の高宮広土教授が司会となり、発表者を交えて総合討論。各研究者の発言があり、高宮教授は「研究者と一般市民が、コミュニケーションを図れるシステムが必要だろう。奄美の子が奄美に興味を持ち、研究できるよう島嶼研分室が支援していきたい」と締め括った。

高校教師の砂泊豊さん(37)は「シンポは参考になった。島嶼研が住民に身近な場所になる方向性は歓迎する」と話した。