水生生物の研究成果報告

鹿児島大学の研究者が奄美群島の水生生物や生物多様性に関する講演を行った

多種多様 生態系の保全重要
鹿大シンポ「貴重な北限分布域」も

 鹿児島大学は16日、奄美市名瀬のAiAiひろばで2018年度鹿児島大学生物多様性シンポジウム「奄美群島の海と川の生き物たち~未来に残したい宝物~」を開いた。多岐にわたる水生生物の研究者の講演があり、奄美群島の生物多様性や生きものの価値などを学んだ。各講師から多種多様な水生生物が紹介され、それらが絶滅しないよう生態系保全の重要性などを訴えた。

 同大は16年度から、「薩南諸島の生物多様性とその保全に関する教育研究拠点整備プロジェクト」に着手。これまで年度ごとに、陸上植物や外来種など異なるテーマのシンポジウムを奄美大島で開催してきた。

 開会で同大の高松英夫理事があいさつ。「分室は4月に港町に移転するが、これからもみなさんに最前線の成果を伝えていく」と話した。

 水産学部の久米元准教授は「奄美大島におけるリュキュウアユの生活史」を講演。「リュウキュウアユは冷水温を好む魚。温暖化が進むと厳しい局面になる。河口干潟域を健全に守る必要がある」と語った。

 同学部の山本智子教授は、「奄美・加計呂麻で出会う干潟の底生生物」を報告。「底生生物は、海底に付着する移動力が弱い生きもの。スナガニ科の生きものが海水や泥などに含まれる有機物を食べて穴を掘るので、干潟の浄化に一役買っている。九州以北とは異なる生物相で、貴重な北限分布域になっている」。

 国際島嶼教育研究センター奄美分室の藤井琢磨特任助教は「奄美大島で見つかる多様なサンゴ群集」を講演。「サンゴを覆い殺してしまう海綿動物が見つかったが、増殖要因など生態解明に知見の収集が不可欠。サンゴ白化現象は、被度低下~回復を繰り返すダイナミックな生態系の局面の一つ。回復し得る良好な生息環境の保全が重要」と説明した。

 大学院連合農学研究科の寺田竜太教授は「奄美群島の海藻・海草類」と題して講演。「藻場は光合成の場や魚介類の隠れ家、産卵場など、生態系、地域社会に重要な役割がある。熱帯性海草の北限や、希少な淡水の紅藻類が生息する多様な生育環境で、沿岸環境保全と環境に調和した持続的な利用が求められる」。

 このほか総合研究博物館の本村浩之教授の「奄美群島の魚たち」や、水産学部の鈴木廣志教授の「奄美群島のエビ・カニ類」の講演や総合討論が実施された。

 奄美市名瀬の崎原小中学校の小学6年・濵畑良源くん(12)は「生きものが好きで参加した。リュウキュウアユやサンゴなどの話が勉強になった」と話した。