映画「あまのがわ」

渋谷「おはら祭」での写真をバックに「ぜひ、奄美での上映と太鼓打ちの公演を」と語るよしださん=茗荷谷の事務所にて

初日舞台あいさつに訪れ「初の映画でドキドキした」と語った福地桃子さん(中央)ら=9日、有楽町スバル座で

奄美でも上映をと望まれる「あまのがわ」

奄美での上映願う
奄美出身よしださん、主演女優に太鼓指導

 【東京】9日から有楽町スバル座などで、ロードショーが始まった「あまのがわ」(古新舜監督・脚本・原作)の主演女優・福地桃子さんに太鼓打ちの指導を行ったのは、奄美出身で鹿児島育ちのよしだもみじさん(58)。毎年、渋谷で行われている「おはら祭」には初回から出演。初回のNHKホールの緞帳をあげたのは「太鼓打=てこうち= 魁=さきがけ=」。これをまた主宰する魁粋太朗=さきがけいきたろう=はよしださんの別名だ。いろんな顔を持つよしださんのことと映画の話を聞いた。

 よしださんは、笠利町用安と同須野出身の両親の間に旧名瀬市の伊津部町で生まれ、3歳頃に鹿児島へ。毎年夏には、同安勝町で織工をしていた祖母の家に帰省したり、両親は鹿児島でも島口でしゃべっていたため「今でも島口はすべて聞き取れる、話はできないけど」と話す。

 そのよしださんは、中学3年時に、鹿児島市与次郎ケ浜でスカウトされ学校には内緒で、CMタレントなどとして活躍。その後、歌手・俳優・コメディアンと多彩な経歴を持つ。

 上京することになったのは、鹿児島で出会った妻が和太鼓を習っていた東京の人だったため。「妻と一緒になるために東京へ来た」という。

 当時、妻が入会していた伝統ある「湯島の白梅太鼓」会長に「のれん分け」を直談判。「お前がやるのだったらいいよ」とすんなりOKをもらい「和湧太鼓打会=わゆうてこうちかい=」を立ち上げ、妻の太鼓とよしださんの話術で人気を博したが、その際に太鼓打ちを始めたという。30歳の頃だ。

 現在は先に紹介したプロの和太鼓集団「太鼓打 魁」を率いて世界各国で公演。南アフリカのヨハネスブルグ地球環境サミットで演奏するなど大活躍している。

 映画「あまのがわ」で太鼓を教える指導者の役を探している話を知人から紹介されたが、「表舞台に出るのは控えたい、育てるところにいるから」と一旦は躊躇=ちゅうちょ=。だが古新監督から「鹿児島を舞台に、和太鼓主体の映画を撮りたいので、手伝って欲しい」と請われ、協力することに賛同して一昨年の「おはら祭」からロケは始まったという。

 よしださんは、親友の自殺や母親との確執で心を閉ざした主人公の琴浦史織を演じる福地桃子さんに和太鼓を指導。「本人の意気込みがすごかった。めちゃくちゃうまい。映画を見たらわかりますよ」と絶賛する。

 次回は奄美を舞台に映画をと古新監督に熱望しながら、「この作品の上映と太鼓打公演の再演が奄美でできると、とてもうれしいよねえ」と笑顔で語り、「島のことができるならお手伝いしたいので、何でも言ってくださいね」と語った。

映画「あまのがわ」のあらすじ

 母と二人で暮らす高校生の琴浦史織(福地桃子)は、大好きな太鼓を母親に反対され、母との関係がうまくいかず、不登校に。母、家、友達との関係もすべて嫌になってしまった史織は次第に心を閉ざしていく。

 ある日、祖母の住む屋久島を訪れた史織は一台のロボットと出会う。会話ができるAIロボットに興味を示し、自身の心の内を吐露していく史織。ロボットとの不思議な交流の中で、やがてロボットは史織にとって唯一心を許せる友達に。

 一方、交通事故で半身不随になってしまった鷲尾星空は病室の中で生きる目的も失い、空虚な日々を過ごしていた。もう一人の主人公のようなロボットには、心を無くした史織と身体を無くした星空との不思議な秘密が・・・