改正奄振・小笠原法案を可決した衆議院国土交通委員会(インターネット審議中継より)
衆議院国土交通委員会(谷公一委員長)が13日あり、奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案を審議した。いずれも今年度末で期限切れを迎えることから、法の有効期限を5年間延長するもの。質疑後の採決では改正法案への賛成が起立総意により可決。今後衆院本会議で採決されるが、全会一致で可決される見通しだ。石井啓一大臣は「インフラを生かしながら、それぞれの地域の特性を生かした観光を始めとする産業の振興、定住環境の改善等のソフト施策に力を入れて支援することが重要」と述べた。
質疑は県選出衆院議員の金子万寿夫氏(自民党)、川内博史氏(立憲民主党・無所属フォーラム)ら各会派の委員が行った。
金子氏は、▽奄振交付金による条件不利性の改善、地元が策定した成長戦略ビジョンの施策反映等による5年間の評価▽改正法案で新たに創設している特定重点配分対象事業の役割▽世界自然遺産登録で小笠原の現状を踏まえた奄美の観光受入環境整備―などをただした。
改正奄振法案で交付金では、特定重点配分対象事業のほか、奄美群島で製造された加工品、原材料等も対象品目に加える輸送コスト支援事業の拡充、奄美群島外の学校等に在学し、群島の住民に扶養されている人も「準住民」として運賃軽減の対象とする航路航空路運賃軽減事業の拡充―など制度の充実・強化を打ち出している。
金子氏の質疑に対する麦島健志国土政策局長の答弁によると、条件不利性の改善策が輸送支援事業拡充と航路航空路運賃軽減事業の拡充。成長戦略ビジョンの実現について麦島局長は「特定重点配分対象事業という枠組みを設けて雇用拡充や人材育成、交流人口拡大を図る事業のうち、民間と連携した新たな取り組みに関して交付金率を10分の6にかさ上げするとともに地元負担については、新たな特別交付税を措置することで市町村負担を軽減する」と説明。事例として民間との連携により民泊を核とした体験交流事業といった取り組みに対し、従来よりも強力に支援することが可能になるとした。
世界自然遺産登録に関し小笠原の事例を踏まえて奄美の観光受入環境整備について、麦島局長は「自然環境の保護保全と両立するエコツーリズムの推進を図るとともに、来訪者の満足度を高めるための二次交通の充実、キャッシュレス化の積極的な受入環境整備に関し、しっかり支援していきたい」と述べた。
成立を目指す改正法案について石井大臣は「世界自然遺産登録の動きも踏まえつつ国が策定する基本方針を速やかに策定して、次の5カ年に向けた取り組みを滞りなく進める環境を整えたい。今後も地域と連携しながら奄美群島と小笠原諸島の振興に万全を期す」との決意を示した。
川内氏も運賃軽減事業の拡充を取り上げたが、それに対する答弁によると将来的に奄美に移住する人も対象にする考え。石井大臣は「交流人口拡大に向けて、移住を準備している人も住民並みの運賃割引を適用できるよう必要な措置を盛り込みたい。出身者などさらなる対象の拡大は今回の措置の効果を検証しつつ、地域の要請などを踏まえて検討すべき課題と考えている」と述べた。