春分の野山彩る愛らしい花々

【ギンリョウソウ】(撮影地・大和村)イチヤクソウ科の多年生の腐生植物。全体が純白または微赤色を帯びるが、乾けば黒褐色になる。花は筒状で白色。大きさは約1・5㌢。茎が倒れ、地に接してつぶれ、微小な種子を地面に散布する。和名は「銀竜草」。白いろうそくのような感じを龍に見立てたことによるもの。

 

【アマミエビネ】(撮影地・湯湾岳)ラン科で奄美大島の固有種。環境省の絶滅危惧IA類に数えられる。亜熱帯原生林内の林床に生える。花は径約2・5㌢で、白色または帯紫白色。キリシマエビネに近縁。かつては奄美大島内の標高300㍍以上の林床でごく普通に見られたが、園芸採取などにより絶滅寸前となった。

 

【アマミセイシカ】(撮影地・河内川)ツツジ科で、7~8㍍の小高木。奄美大島の固有種で環境省の絶滅危惧IA類に数えられる。花の大きさは5~8㌢で枝先に2~4個をつける。咲き始めは淡いピンクで、開花後は白色になる。漢字では「聖紫花」と書く。園芸採取や森林伐採、道路工事などにより絶滅が危惧されている。

 

西康範さん撮影

 

 気温が徐々に上がり、新緑の輝きが増し始めた春分の奄美。ひとたび野山に足を踏み込めば、花々があちらこちらに愛らしい姿を見せる。

 奄美市名瀬の西康範さんはこのほど、ギンリョウソウ・アマミエビネ、アマミセイシカの3種を撮影。大きさ、形、色ともにばらばらでバラエティーに富んだ花たちだが、一様に春の訪れを楽しむかのように見える。

 参考文献=『奄美の絶滅危惧植物』(山下弘さん著)、『琉球弧野山の花』(片野田逸朗さん著)。写真はいずれも西康範さん撮影。