徳之島発感動劇を奄美大島で

中高生たちがシマ口やシマ唄、闘牛などをベースに徳之島の西郷を描いた「島口ミュージカル結」


西郷(琉さん)と愛加那(森田さん)の別れのシーンには多くの人が涙した

中高生の島口ミュージカル結
西郷と徳之島の青年の絆物語 観衆の目奪う

 徳之島の中高生を中心につくる劇団・結シアター手舞の奄美大島公演「島口ミュージカル結―MUSUBI―」が21日、奄美市名瀬の奄美文化センターで昼と夜の2回公演で上演した。劇は、西郷隆盛が徳之島の青年・琉仲祐と交わした知られざる絆の物語。中高生役者たちは、シマ口やシマ唄、闘牛など島の伝統芸能をミュージカルに乗せて、徳之島発の感動劇を奄美の観衆に届けた。

 劇団は、2015年の国民文化祭を機に結成し5年目。地元の中高生43人の役者を中心に、OG・OB11人、天城町連合青年団6人の計60人が出演した。

 物語は、遠島の刑で徳之島に流された西郷の生活記録をもとに制作。当時、世話役を務めた琉仲祐(徳嶋仲祐)が西郷と出会い、交流を通じて国づくりの想いを募らせ、京に上る姿を描いた。

 舞台制作は、沖縄のTAOファクトリーが担当。地域の伝承・伝説を大胆にアレンジする琉球古典芸能「現代版組踊」と呼ばれる手法で、ケンムンや稲作など、地域文化も豊富に取り入れた。

 舞台は、オールキャストの現代ダンスで圧巻の幕開け。役者たちは、情緒あふれる演技やダイナミックな踊りを交互に織り込み、観衆の目を奪った。

 劇中は、仲祐が西郷に惹かれ慕う様子や、愛加那との再会・別れのシーンなど、笑いあり涙あり。劇後は、惜しみない大きな拍手が観衆から送られた。

 愛加那役・森田葉月さん(樟南第二高校2年)は「来年はもっと島のPRにつながるように」。役者を目指す琉仲祐役・石原大雅さん(同1年)は「仲祐役を極めたい」と来年度に向け抱負。卒業公演となった西郷役の琉大志さん(同3年)は「結に入ることで島の歴史や伝統を詳しく学ぶことができた。お客さんから〝感動した〟との言葉をもらいうれしかった」と振り返り、後輩には「必ず、東京公演の実現を」とエールを贈った。

 大島高校のダンス同好会の仲間と鑑賞したという屋舞美さん(17)は「表情や振付など同じ高校生とは思えない動き。演技も素晴らしく感動した」と喜んだ。