※現場から※ 入管法改正と奄美

※現場から※ 入管法改正と奄美

奄美市名瀬市街地の小売店などでは働く留学生の姿が多くみられる

人手不足支える留学生アルバイト
グローバルな「結の心」を

奄美市内のコンビニエンスストアやスーパーなどのレジカウンターには「日本語研修中」と書かれた名札を下げた従業員が多く見られる。手際よく対応してくれる上、顔を見るだけで、いつも買う商品を用意してくれる“おもてなしぶり”も発揮する。外国人材受け入れ拡大を目指し、4月からは改正出入国管理法(入管法)が施行される。外国人が働く間口が広がり、人手不足解消に向けた一歩として外国人労働者に期待がかかる。

改正入管法では、新たな在留資格「特定技能(1号、2号)」が設けられ、農業や外食業、宿泊、介護などの幅広い業種で“単純労働”を含めた就労が認められるようになる。

鹿児島労働局の調査によると、県内の外国人労働者数は昨年10月現在で6862人。届け出が義務づけられた2007年以降最多となった。受け入れ事業所数も年々増加し1397件と07年の2倍近くに増えた。奄美群島内の状況を示す名瀬公共職業安定所管内で見ると、外国人労働者数286人だった。

奄美市によると、同市内には45人の外国人労働者がおり、在留資格別では永住者13人、配偶者が日本人の外国人3人、ALTなどの専門的・技術的分野の在留資格は12人。最も多かったのは資格外活動(留学生など)16人だった(17年10月現在)。

法改正を間近に控えてはいるが、同市は人手不足への対策について、「出身者などのU・Iターン者、専業主婦などの雇用対策が先。マッチングの機会を設けるなどを考えている」。外国人・高齢者の人材確保は“次の一手”として見据えている。

同市市街地の小売店などでよく見かけるのは外国人留学生の姿だ。同市名瀬小浜町のカケハシインターナショナルスクール奄美校では、学生全員がコンビニ、小売店、飲食店、ホテルなどの幅広い業種でアルバイトをしているという。同校事務主任の星野良太さんは「学費や生活費を考えると、学生のバイトへの関心は高い。働くことができるから日本語学習への意欲にもつながる」と話す。

離島の日本語学校ということで、都市圏に比べ最低賃金が低いというハンデはあるが、アルバイト先での人間関係の良さが満足度の高さにつながっている。「忘年会などにも呼んでもらっているようで、本当にありがたい」と星野さん。

同市内に5店舗を展開する㈱グリーンストアにも、ベトナムやネパールなどから来た15人ほどの留学生が働く。同社取締役部長の里綾子さんは「一生懸命仕事をしてくれる姿は見習わなくてはならない。仕事の覚えが早く、次にすべきことなどにすぐ気が付く」と留学生らの仕事ぶりを評価する。

一方で留学生が働ける限度は週28時間。「本当とはもっと働いてもらいたいが…」との苦悩もある。勤め初めの留学生には醤油をソースのコーナーに置いたり、食材を知らなかったりという言語や文化の壁によるミスも。そういった際は先輩アルバイトが母国語で教えるという。そうした事情を踏まえた上で、里さんは「興味を持って積極的に仕事をしてくれる。雇えるなら正社員として雇いたい」。

昨年4月から同店で働くベトナム人のグェン・ティー・タムさん(23)は、週5日勤務で平日4時間・土日6時間と、週28時間めいっぱい勤務する。差し入れとしてベトナム料理を持ってくるなど、社内サービスの精神も旺盛で、「優しい人が多く、毎日仕事をするのが楽しい」と話した。

改正入管法では、外国人労働者の間口が広がり、留学生が卒業後に働ける職種も大幅に広がる。奄美への影響はふたを開けるまで分からないが、星野さんは「支援機関として、受け入れ企業に近づく努力を行っていく。外国人労働者は1事業所じゃなく、奄美全体で受け入れ態勢を考えるべき」。里さんは「お客さまにも外国人が働いているということを理解してもらうことで、気負わず働きやすくなる」。働く人々が「毎日仕事をするのが楽しい」と言ってくれる状態を作るには、住民側が島とは異なる文化を理解し受け止め、そこにいて当たり前だといえる環境がなくてはならない。制度設計ももちろん必要だが、グローバルな目線での“結の心”をぜひ持ちたい。
     (西田元気)