生徒たちに洋裁を教える久保倫子さん(右)。着ている服も手作り
裁断してこれからリメイクする大島紬
【東京】「自分の服は全部手づくり」と話すのは女性で初めて東京名瀬会会長を務めあげた、奄美出身者が誇る東京の大先輩・久保倫子さん(82)だ。西大井に建つ名門・小野学園内の前身となった日本高等洋裁学院から脈々と続く洋裁教室に指導者として週に2日、鎌倉から約40分かけて通勤している。生徒たちが訪れている「小野学園カルチャー教室」の洋裁教室で洋裁指導を行う現役の久保さんの様子や話を聞いた。
洋裁教室にはこの日、3人の生徒が訪れ久保さんの指導を受けながら、それぞれが自分の服作りに熱中していた。一人は子連れの母親で、こちらの女の子は母親が作った手作りの可愛い衣装を着て、お絵かきに夢中の様子。
生徒たちは各自、布を広げコートのパターンを作ったり、春に向けて自分の洋服を縫ったりした。
生徒の一人から「先生、裾が合わないのですけど・・・。片方だけダーツ取ったみたいです」と質問が入ると、「こちらも摘まむといいわね」とすばやく対応を指示する。
またある時は作業中のロックミシンの糸が切れた。とても細い糸で糸の流れを確認しながら、眼鏡を出して針に入れるが、うまくいかない。子連れの生徒と一緒に針に糸を通した。
久保さんは自らも縫製作業を行い、今は大島紬のリメイクを手がけているとのことで、裁断された大島紬を見せてもらった。どんな洋服になるか楽しみだ。
久保さんは、1936年、名瀬で生まれ、大島高校から戸板女子短大へ進むも体調が悪く中退後、ドレメ専門学校で洋裁を学び、ドレスメーカーなどで仕事に就いていたという。結婚後、しばらくは専業主婦を続け、子どもや自分の洋服や雑貨など、すべて手作りしてきた。この教室で指導するようになって7年目。夫が亡くなった翌年に小野学園に勤務していた従兄弟から洋裁の腕を見込まれて声がかかったという。
子どもの声が聞こえる教室の中での仕事は、他には代え難いほどうれしく、「志ら梅祭」といわれる文化祭でエプロンや編み物の作品を出品したり、春休みや夏休みなどがあるのも、ありがたく楽しく通勤していると話し、「年下の人に任せないといけないと思う年齢になったが、いつでも勉強になることがある。できる限り続けていきたい。この年で仕事が続けられるのも小野時英理事長や井口淳事務長のおかげです」と笑顔をみせた。
久保さんの実家は、加計呂麻島の芝でも名門の豊島家。しかし、「芝には行ったが、知り合いがいないから困る。名瀬にも実家がないのよ」とのことで、最近は、娘や息子から「一緒に住もうよ」と誘われるが、「どこにも行きません。自由な生活を楽しみます」と鎌倉で一人の生活を謳歌している。健康長寿の現役先生だ。島のミキが大好き。
(永二 優子)
1932年に小野安之助氏と進子氏が創立以来、80年有余にわたって、品川の地で、幼児・児童及び女子中高校生の教育にまい進してきた学園。前身は日本高等洋裁学院。近年のグローバル化により、時代の要請に応え得る有為な人材を送りだし続けていこうと2020年度から中学校・高等学校の共学化を予定。歌手・三沢あけみさんの母校で、卒業生には奄美出身者の子弟も。