藤井さん(瀬戸内町出身)吉川英治文新人賞

吉川英治文学新人賞を受賞した瀬戸内町出身の藤井太洋さん(提供写真)

『ハロー・ワールド』デビュー7年目の受賞驚き

 瀬戸内町出身の作家・藤井太洋さん(47)の著書『ハロー・ワールド』(講談社)=写真=がこのほど、第40回吉川英治文学新人賞((財団法人)吉川英治国民文化振興会主催)受賞した。藤井さんは「デビューして7年目でこんなに大きな賞をもらうことができて驚いている。とてもうれしい」と受賞を喜び、「奄美空港には島尾敏雄さんの作品の横に自分の作品が並んでおり感謝したい。応援してくださってありがとうございます」とふるさと・奄美のファンへの思いも寄せた。

 同賞は大衆小説分野の文学新人賞。吉川英治賞の一部門。最も将来性のある新人に送られる。同法人が主催し、同社が後援する。

 受賞作『ハロー・ワールド』は、近未来のエンジニアを主人公とした短編集。インターネット社会の光と影を描く。藤井さんは「 (自身が)20年間親しんできた“もう一つの社会”としてのネットを描きたかった」と作品について語る。

 藤井さんは同町古仁屋出身。古仁屋中学校卒業後、錦江湾高校に進学。国際基督教大学を中退し、ソフトウェア会社で勤める傍ら、通勤時間を利用し、スマートフォンで執筆した長編小説『Gene Mapper』を12年にインターネットショッピングサイトで自費出版し、話題を呼んだ。現在は退職し、執筆に専念。『オービタル・クラウド』で日本SF大賞を受賞。日本SFクラブの会長も務める。

 そんな藤井さんの父・洋一郎さんと、母・博子さんは同町清水でカフェ・焼き物工房を営む。二人は藤井さんの受賞について「驚いた」と口をそろえる。洋一郎さんは幼いころの藤井さんについて、「普通の子だったと思うが…」と振り返る。「退職前に相談があったが、作家で生活できるはずがないと思い心配だった」とも。2人は「身体に気を付け、元気でしっかり頑張って」と語った。

 藤井さんは現在、『文芸カドカワ』(㈱KADOKAWA)で同町を舞台にした小説『第二開国』を連載中。藤井さんは「出身者として大きな物語を書くことができれば」と話した。