光センサー選果場利用

光センサー選果場利用

奄美大島産タンカンの品質安定には光センサー付き選果場利用が欠かせない

条例化などルールづくり求める声
市場仕入れの仲買人 品質のばらつきに危機感
ニュース・FOCUS

 「奄美たんかん」のブランド化へ高性能光センサー付き選果場の利用を高め、粗悪品の流通を防ごうとJAあまみ大島事業本部生産部会連絡協議会果樹部会が音頭を取り先月下旬、初めて開催された出荷にかかわる検討会。生産者、JA、名瀬中央青果㈱、仲買人、小売店などが出席し意見交換することで情報共有の場となったが、市場に流通するタンカンの品質のばらつきに危機感を募らせる仲買人などの青果業者からは、選果場利用の根拠となる条例化などルールづくりを求める声が出ている。実現には関係自治体の関心が鍵となりそうだ。

 奄美大島で生産されているタンカンの出荷窓口は、JA、地元市場である中央青果、生産者による個別販売(個販)と複数ある中、窓口の一元化を目指し奄美群島振興開発事業(奄振)のソフト事業を活用して奄美大島選果場=奄美市名瀬朝戸=が整備された。総事業費は2億9850万円。光センサー選果機では、果実1玉ごとに糖度やクエン酸など内部品質が瞬時に測定でき、外部の傷を測定する機能も備えていることから、光センサーを通しランク付け(秀・優・良)された商品は「品質が保証されたもの」となっている。

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 奄美市の指定管理者として選果場を運営しているのがJA。組合員から集出荷されたものを販売する共販だけでなく選果のみの委託も対応している。取扱量250㌧が収益の分岐点。利用は伸び悩んでおり、取扱量136㌧だった17年度の収支決算では138万円の赤字となった。18年度はさらに低迷。共販量は13年の選果場開設以来最低の67㌧、委託でも35㌧にとどまり、両方合わせても102㌧と中央青果取扱量(214㌧)の半分弱にすぎない。

 「宝の持ち腐れ」とも言える光センサー選果場が利用されず、ほとんどが市場へ。一方で市場では選果場未利用(光センサーを通していない)のタンカンが出回っているため品質のばらつきが顕著で、購入した消費者からクレームが出る事態にも直面している。そこで品質の統一へ選果場利用の機運を高めようと意見交換の場が設けられた。

 開催を呼び掛けたJA果樹部会の大海昌平部会長は「JAだけでなく市場関係者も出席し、市場から仕入れている仲買人も加わって情報を共有でき、品質保証の手段として選果場利用の必要性が認識できたことは大きな前進。今後も今回のような場を継続していきたい」と語る。JAは18年度産の出荷にあたり、初めて地元市場(中央青果)への出荷を試みた。しかし量が少なく1回のみに。今後の予定としては秀品や優品の糖度を引き上げた上で再び市場にも出し、市場から仕入れる仲買人などの青果業者に光センサー選別品の品質の高さ、安心感を理解してもらう方針だ。

 市場から仕入れている仲買人の一人は語る。「糖度計を持参して自分でチェックした上で12度以上のものを購入している。だが味にばらつきがあり、すべてが12度以上ではない。光センサーで選別されたものは品質が一定だけに、『市場のものは安心できない。選果場利用のJAのものを買いたい』という仲買人も出ている」。

 市場で試食して美味しいと判断し仕入れ本土からの注文客を含めて販売、ところが「今年のタンカンは美味しくないものもあった」となると産地への信頼を失う結果を招く。品質の安定より、売れたらいいという商売優先は産地の将来に禍根を残さないだろうか。これを懸念する仲買人もいる。「品質が劣るものを安く仕入れ、それでも売れるのだから構わないという姿勢を改めるべきだ。産地への信頼がない限りブランド化は困難だろう。品質の安定へ『タンカンの販売は選果場利用』をルールとして明確にすべきではないか。条例化によって利用を明確に打ち出すことで、市場側も持ち込む農家などに選果場利用を働きかけることができる」。

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 選果場利用の根拠となる条例化などのルールづくり。この提案は、本来なら奄振で整備されただけに「公共の財産」として住民みんなで利用しなければならないのに、利用の低迷で選果場を「奄振の無用のハコモノ」にしないためにも一考の価値があると言えるだろう。実現の鍵を握るのが行政だ。JAだけに任せるのではなく行政が危機感を持ち、ルールづくりへ踏み込む時期に来ている。

 また、品質の悪いタンカンを市場に流通させないためにも農家(生産者)を育成する技術指導機関の役割は重要だ。これも兼業農家、部会員以外の農家が多いという問題があるだけにJA任せでは改善できない。県や市町村、JAの担当職員で構成する団体(園振協)の存在意義が問われている。
 (徳島一蔵)