アリモドキゾウムシの成虫が付着したサツマイモ(県大島支庁農政普及課特殊病害虫係で)
国の助成のもと県が喜界島をモデルに進めている特殊病害虫・アリモドキゾウムシ根絶事業は、今年度も引き続き地元住民と一体となった防除対策を実施、サツマイモ畑(イモ類に寄生し食害)等の適正な管理を推進するため、必要な対策を重点的に行う。上嘉鉄集落など島の西部地域で進められている不妊虫放飼は今年度から虫の数を拡大するほか、5区域に分けて島内全域で防除・調査を実施していく。
今月24日に行われた喜界地区アリモドキゾウムシ防除対策協議会(会長・川島健勇喜界町長)の総会で、2019年度事業計画などを決めた。同島での根絶事業は01年度からスタート。①誘殺剤(テックス板)の散布②放射線照射した不妊虫の放飼③寄主植物(ノアサガオ、グンバイヒルガオ等)除去―が行われてきたが、18年度からはテックス板に替わる誘殺剤(アリモドキコール粒剤)の全島散布を開始している。
今年度事業計画によると、島を五つの区域に分けて防除・調査を実施。このうち不妊虫放飼区域は生息密度が低下している島の西部の12集落(約1800㌶)で。放飼される虫の数は1週間に65万頭から100万頭に拡大。奄美市名瀬の専用施設で処理された不妊虫は毎週水曜日にフェリーで喜界島に輸送される。残り25集落の密度抑圧防除区では寄主植物の除去・殺虫剤の散布、アリモドキコール粒剤の処理が行われる。寄主植物除去・殺虫剤散布、粒剤処理は不妊虫放飼区でも実施される。こうした防除区域ではモニタリングや寄主植物調査、フェロモントラップ調査もある。
早期根絶に向け地域住民との協力体制を加速化し防除を推進していくが、同島でのサツマイモ栽培は、ほとんどが販売用ではなく自家用としての庭先栽培。県や町などの関係機関は住民に対し、サツマイモ畑の適正管理を呼び掛けている。サツマイモを介したアリモドキゾウムシの移動拡散を避けるためで、▽サツマイモ栽培の自粛▽適正な栽培管理の推進や多発生地区から低密度地区への移動自粛▽ヤギの飼養者に対してエサとしてのサツマイモ利用の自粛―などを要請していく。
アリモドキゾウムシ 熱帯、亜熱帯を中心に広く分布するサツマイモの最も重要な害虫で、1903年には沖縄での被害を確認(侵入害虫)。国内ではトカラ列島以南の南西諸島および小笠原諸島に分布。イモゾウムシとともに植物防疫法で発生地域から未発生地域への寄主植物の移動が規制されている。
アリに似た体長6~7㍉の小さな虫で、サツマイモの表皮に小さな穴をあけて卵を産みつける。ふ化した幼虫はそのままイモの中に食い入ってトンネル状に食い荒らす。被害イモには強い苦味と独特の悪臭があり、食用・家畜の飼料にもならない(農林水産省、県大島支庁資料より)。