フッ化物洗口液でうがいをする知根小の児童ら
奄美市教委は小学生のむし歯対策として、「フッ化物洗口」の導入に取り組んでいる。昨年度、モデル校として3校でスタート、今年度も実施校の拡大に向け、学校での説明会などを実施している。背景には、むし歯のある子どもが全国や県平均を上回る状況がある。フッ化物洗口を導入した地域では、むし歯のある児童が減少した実績もあり、市教委は「できるだけ多くの学校で導入できるよう、今後も学校や保護者らと協議を進めたい」としている。
5月23日朝、奄美市名瀬根瀬部の知根小(愛島一校長、11人)で、児童らがCDの音楽に合わせながらうがいを始めた。同校では昨年9月から「ぶくぶくタイム」として、毎週木曜朝の授業開始前の約5分間、フッ化物洗口を行っている。約10㍉㍑の洗口液を口に含み、音楽に合わせながら、顔を上下、左右に動かす。うがいを終えた6年生の前田優斗君(11)は、「はじめは嫌だったけど、慣れてきた。むし歯に強い歯になるなら続けたい」と話す。
同校の池田誉教頭は「週に1回ということで取り組みやすく、無償で実施できるため負担もない。児童全員ですることで、むし歯予防に対する意識向上にもつながっている」と話す。
市教委は、昨年9月から同校のほか東城小中学校、佐仁小学校でもフッ化物洗口を無償で実施。保護者の承諾を得て、希望する児童に週1回程度行っている。今年度も市小中学校での実施が決まった。
文部科学省の学校保健統計調査によると、全国でむし歯になったことがある小学生の割合は、1979年の94・8%をピークに減少、2018年度は45・30%まで低下した。鹿児島県は18年度56・1%で全国平均を大きく上回り、むし歯を保有する児童が多いという結果となった。
全国一むし歯が少ない新潟県は40・0%。同県は70年から全国に先駆け、県内の小学校でフッ化物洗口を実施、こうした取り組みがむし歯予防につながっている。文部科学省も、歯科指導の取り組みの違いが地域間の差につながっていると、分析している。
フッ化ナトリウムを含む液でうがいをするフッ化物洗口は、歯のエナメル質を保護し、定期的に行うことで虫歯予防に効果があるとされる。
市歯科医師会の畠義一郎会長は「新潟県の取り組みなどを考えると、フッ化物洗口がむし歯予防に効果があることは明らか」と話す。
名瀬保健所管内では2017年度調査で3歳児のむし歯保有率が27・36%で県平均19・54%を大きく上回っていることも先月報告された。また、市教委が15~17年度に実施した調査では、小中学校でむし歯の治療が必要とされた子どもは、小学校で毎年約1100人、中学校で同約500人だったという。
こうした状況について、畠会長は「奄美では、むし歯になってから治療するという考えが中心で、予防に対する意識が低い。歯磨きやフッ化物洗口などをしっかり行えば、むし歯は予防できる」と話す。
歯にとって、永久歯に生え変わる小中学生の期間は、最もむし歯になりやすい一方、予防に最適な時期という。生え変わりの時期は、歯の表面が柔らかいため、フッ化物洗口を継続することで、洗口液に含まれる成分が歯をコーティングし強くする。畠会長は「一生むし歯になりにくい歯をつくれる小中学生の時期、奄美では多くの子どもたちが、むし歯になり、治療を受けている。フッ化物洗口に対する正しい知識を持ち、すべての小中学校で取り組んでほしい」と呼び掛ける。
一生むし歯のない健康な歯をつくるためにも、学校や保護者らが早急に取り組むべき課題ではないだろうか。
(赤井孝和)