「原告への謝罪ほしかった」

国の控訴断念を受け、心境を語った赤塚さん(9日午前、奄美市名瀬)

ハンセン病家族訴訟、国が控訴断念
今なお偏見 学校教育での啓発注文

 安倍晋三首相は9日、首相官邸で会見を開き、ハンセン病患者の家族に対する賠償を国に命じた判決について、控訴を断念する方針を発表した。原告団の副団長で奄美市名瀬の赤塚興一さん(81)は「控訴をしないことは予測していたので、当たり前のことをしただけと受け止める。もっと素直に原告への謝罪をしてほしかった」と語った。

 同訴訟は2016年2月以降、元患者の家族ら561人が原告となり、国に賠償と謝罪を求めてきたもの。6月28日、熊本地裁は判決公判で国の賠償責任を認め、原告のうち541人に対し計3億7675万円を支払うように命じた。

 安倍首相は会見の中で「今回の判決内容について、一部には受け入れがたい点があることも事実」とした上で、「筆舌に尽くし難い経験をされたご家族の皆さまのご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない。その思いのもと、異例のことだが、控訴しないこととした」とコメントした。

 赤塚さんは「500人以上に対し、3億7千万円で文句を言わせないようにできたという点で、この判決で国は助かったのではないか。満足はしていないが、自分にとってはこの判決が一つの区切り」と肩を落とす。また、「ハンセン病に対しての偏見は今もある。今後も学校教育の中での啓発活動を続けてもらいたい」とも話した。

 訴訟を支援してきた「奄美和光園と共に歩む会」の星村博文事務局長は「まずは国が責任を認めたということで、率直にうれしかった」。一方で、「社会的な啓発方法など具体的なことを考えることが必要。これをスタート地点と思い、今後も同様に元患者・その家族を支える取り組みを進めたい」とした。