奄美で初、B型肝炎患者講義

B型肝炎について正しい知識を持つよう訴えた岡弁護士

「心の痛みに寄り添いたい」
原告・弁護団、奄看専で

 医療従事者を志す学生らに病気について正しい知識を身につけてもらおうと、B型肝炎訴訟九州鹿児島県原告団・弁護団は23日、奄美市名瀬の奄美看護福祉専門学校で患者講義を開いた。県内では3回目での開催は奄美群島内では初めて。同校看護学科の学生76人を前に同弁護団の鈴木穂人弁護士・岡千尋弁護士がB型肝炎問題の経緯、感染方法や症状などを解説。患者2人は経験した精神的苦痛を語った。

 1948年以降、集団予防接種の注射器の使いまわしにより、約45万人がB型肝炎ウイルスに感染したとされている。和解と賠償は進むものの、感染に対する偏見や差別がいまだに根強く残る。

 厚生労働省の調査によると、医療機関で偏見・差別を感じたことがあると感じる患者が多いという。こうした現状を受け、同原告団・弁護団は医療教育において、病気についての正しい知識を身につけさせる目的で、看護師や医師などを志す学生らに講演活動を行う。

 学生らの前に立った女性患者は、「看護師が自分の使ったタオルを、手袋を持っていく姿を見て疎外感を強く感じた」など精神的苦痛を吐露。男性患者は職場で告知を止められた経験を紹介し、「世間的に偏見や差別がある。これから不治の病と闘わなければならず、普通の生活には戻れない」。また2人は看護師の卵の学生らに、「病院にやってくる肝炎患者が人生を狂わされ、苦しみながら治療していることを知ってほしい」などと訴えた。

 2人の講話の後には、学生らが患者の採血時の接し方や、安心して治療できるための手段などについて議論。「正しい知識を身につけ、説明をすることで不安軽減につながる」、「笑顔で接し、偏見・差別を持っていないということを体現する」などの意見が挙がった。

 講義を終え、鈴木弁護士は「皆さんが熱心に聞いてくれて、感動している。目の前の患者さんにいろいろな背景があるという想像力をもって素敵な看護師になってほしい」と語った。受講した同学科2年登大夢さん(28)は「現場で働き、同じB型肝炎の患者さんと接するときは、正しい知識を持ち、偏見なく心の痛みに寄り添いたい。これからさらに学習を重ねる」と語った。