「硫黄鳥島」上空に大規模噴気

 

大規模な噴煙と見られる白煙を上空に立ち上らせた硫黄鳥島=23日午後6時7分~14分ごろ(宮田正行さん撮影)

 

 

 

天城町民ら目撃 約50年ぶり規模か?

 

 【徳之島】23日午後5時50分ごろ、徳之島の西方約65㌔の東シナ海に浮かぶ無人の活火山島「硫黄鳥島」(沖縄県久米島町)から、白い噴気が立ち上っているのを天城町の住民が目撃し、カメラにも収めた。「まるで水蒸気噴火。あの規模の噴気を見るのは約50数年ぶりだと思う」と感嘆の表情で話した。

 目撃したのは同町与名間でホテル業を営む宮田益明さん(72)と正行さん(45)親子。「最初は雲かと思ったが、見る見る上空に白煙が立ち上った。鳥島は幼い頃から眺めているが、〝噴火〟は初めて。うれしい気分の半面、何かが起きなければいいが、と複雑な気分になった」と正行さん。父・益明さんも「この規模の噴気は小・中学生の頃に見た記憶が。それ以来約50年ぶりだと思う」と感動を伝えてきた。
硫黄鳥島(長さ約3㌔、幅約1㌔)は1631年の噴火で多数の死者を出すなど噴火を繰り返し、島民が島外避難を重ねた歴史を持つ。1967年11月には硫黄採掘従事者たちも噴煙に追われて島外に避難、以来無人島と化したまま。最後に噴火が確認されたのは68年7月という。

 硫黄鳥島の活火山は霧島火山帯の最南端に属し、島の北西部にある「硫黄岳火山体」と南東部の「グスク火山体」の二つで構成。宮田さんが撮影した今回の噴煙の位置からして「グスク火山体」からのものとも推測できるという。

 気象庁火山監視・警報センターは今回の現象について、「周辺の地震計の反応、気象衛星『ひまわり』の赤外データなどから見て、噴火があったとはみられない」とコメント。同センターによると、噴気が高く上がる状態は火山活動活発化の指標とはなるものの、湿度や気象条件なども影響するとのこと。「噴気の上昇だけでは火山活動が活発になったかはわからない」とし、「噴火の兆候は認められない」という従来の評価を変更する予定はないという。

 仮に噴火した場合も、「徳之島や沖永良部島からも距離があるため、大規模なものでない限り火山灰や火山礫=れき=などの心配はない」とした。