特定外来生物「シロアゴガエル」分布拡大

与論島におけるカエル類確認地点(赤丸は初確認地点、〇と◎は今回の確認地点、△は在来カエル類)(提供写真)

急速に生息域を拡大させている特定外来生物のシロアゴガエル(提供写真)

与論、在来種競合や他島への侵入警戒
海洋生物研調査で判明

 特定外来生物に指定されている「シロアゴガエル」が6年前に生息が確認された与論島で、島内全域に分布が拡大していることが分かった。奄美海洋生物研究会(興克樹会長)が同種の分布調査を行い、調査地点47地点の約8割で同種の生息を確認した。同会は在来カエル類との競合や奄美群島内の他島への侵入を警戒し、初期段階での防除などを求めている。

 同会によると、同種は南アジアから東南アジア原産のアオガエル科のカエルの一種。1960年代に沖縄島中部で生息が国内初確認。その後、沖縄県内で急速に分布拡大し、2000年代には無人島や八重山諸島の一部を除くほぼ全域に定着したという。

 鹿児島県内では2013年5月に琉球大学の研究グループが、与論島の南西部3地点で生息を確認していた。その後の分布状況を把握する目的で今年6月に、同会の興さんと木元侑菜さんが地元の竹盛窪さんの協力で生息状況調査を実施した。

 調査は(公社)ゴルフ緑化促進会のGGG国立・国定公園支援事業の助成を受け、与論島内に設定した47地点で同種の鳴き声や生体、卵の位置情報を記録。調査の結果、▽シロアゴガエルのみ確認=6地点▽シロアゴガエルと在来カエル類を確認=33地点▽在来カエル類のみ確認=8地点―と島内の広い範囲で同種を確認。在来カエル類では、リュウキュウカジカガエル、ハロウエルアマガエル、ヒメアマガエルが確認されたという。

 興さんは「わずか6年で全島に拡大していた。物資輸送で他の島にも広がる可能性がある。啓発活動や輸送物資の点検、初期段階での防除など取り組みの強化が求められる」と話した。

 環境省奄美群島国立公園管理事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官は、この情報を得て与論町役場環境課に連絡して役場内での情報共有を依頼。「特定外来生物であり、島内の在来種の捕食や競合などの悪影響、寄生虫の伝播などが懸念される。島から出さないこと、他の島へ侵入させないことが重要。関係者や住民に知ってもらい監視の目を強化していきたい」。

 与論町役場環境課の担当者は、「今月になり調査結果を聞いた。外来種なので、島外に出さない対策が必要。今後関係者などと協議して、対応を検討したい」と話した。